無自覚なまま、愛を蓄えて。
「かしこまり、ました」
不意に言われたので驚いたけど、前もコーヒー頼んでいたな……と思い出した。
注文の聞き取りを終え、私はカウンターの奥へと向かった。
「マスター、コーヒー5つと砂糖です」
「OK。ちゃちゃっと入れちゃうわね」
マスターに注文の内容を伝えてから、そっとみんなのいるテーブルに目を向ける。
みんなスマホをいじったり、理人くんはパソコンをしていたりと各々待ち時間を過ごしていた。
梓くんの方を見てみると何故か視線がバッチリとあってしまった。
慌てて目を逸らし、食器の片付けをする。
「ねぇ。あそこにいるの、優星ちゃんの幼なじみよね?」
「そう、です。覚えてたんですね」
「もちろんよ。あんなイケメン、忘れるはずないじゃない」
梓くんを見てもマスターは何も言わなかったので忘れていたと思ったのに。
覚えていたことに驚く。
まぁ、あの梓くんは1度見たらなかなか忘れられないよね。