無自覚なまま、愛を蓄えて。

マスターに言われて梓くんを見る。


1歩……。彼女になりたいと願ったのなら自分から踏み出さなくちゃ。


自分から、歩み寄らなくちゃ。



「……ご馳走様。美味かった」



それから数十分後。


コーヒーを飲み終えた梓くんたちはお会計をする。


レジ打ちをしていた私に、前言ってくれたようなことを言った。



「俺たち先に外でてるね!」



梓くんがお会計をしているとちづくんたちはそそくさとカフェを出ていった。


その後ろ姿を見送りながらこれはチャンスかもしれない、と大きく深呼吸する。



「梓くん、あの……」


「ん?」



お釣りを渡すのと同時に大きく深呼吸する私。


大丈夫。ちょっと、梓くんを誘うだけだから……。



「もう少ししたらバイト終わるの。つ、伝えたいことあるから少し待ってて欲しい、です……」



一緒に帰りたい、と誘うだけなのにこんなに緊張するなんて。
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