無自覚なまま、愛を蓄えて。

想いを伝えなきゃいけないのに。


上手く話せない。



「それは……。優星が親父さんとちゃんと向き合った結果だよ。俺はお節介なことしかしていない。優星が頑張ったから、今の生活があるんだよ。……今までよく頑張ったな」


「梓くん……ありがとう、ありがとう」



たくさん伝えたいことがあるのに今は“ありがとう”しか出てこない。


しまいには涙まで溢れてきて、次から次へと流れ落ちる。



「……ゆっくりでいいから。優星の話、聞きたい」



そんな私を見て、梓くんはそっと私の涙を指ですくい上げる。


その事にドキッとするけど、今はそれどころでは無い。


ちゃんと想いを伝えないと。



「私、梓くんのこと、幼なじみとして見ていなかったの」


「え?」



深呼吸をしてそう言ったらびっくりしたように目を見開いている。


……そうだよね。


そんな反応になっちゃうよね。


驚かせてごめんね。でも、私は伝えるよ。
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