無自覚なまま、愛を蓄えて。
……ったく、誰がそんな噂を広げたのか。まぁ、今日学校で優星のことをみかけてたまたま名前で呼んでしまった落ちもあるからおそらくどこかでやらかしたのかもな。
とにかく、今は優星のことを保護して安全な場所まで連れていかないと。
慌てて家を飛び出し、優星に言われた場所を目指す。あそこの路地裏はよく行っていたからすぐにわかった。
夜だけど明るい街を走り、路地裏に向かう。久しぶりに優星に頼られてドキドキしている自分と無事でいてくれと願う自分がいて気が気じゃなかった。
角を曲がり、まっすぐ走ると人影が見えた。
「優星!」
「梓くん!」
たまらず声をかけると優星は勢いよくこちらを振り向き、俺の名前を呼ぶ。
久しぶりに優星の声で俺の名前を呼んでくれた。そのことに嬉しくなり、ドキッとする。
だけど今にも泣き出しそうなその顔を見て先に怒りと心配の感情が湧き出た。