無自覚なまま、愛を蓄えて。

あまりにも優星が必死だったので自然と伸ばした左手。後先考えずに伸ばしたけど、優星は……しっかりと俺の手を握ってくれた。


その瞬間に心臓が大きく跳ね上がる。


こんな時に何考えてんだと思ったが心臓は正直者。久しぶりに握った優星の手は小さくて少し、冷たかった。


俺はこの手を離すかと強く握りしめる。それに答えるように優星も、強く握り返してくれた。


……くそっ。こんな時にいったい俺はなんてこと考えてるんだ。


優星のことが可愛くて、尊くて、帰り道を急ぎながらも頭の中は優星のことでいっぱいだった。



「……はぁ、はぁ……今、何時……」


「6時59分。超ギリギリ間に合ったな。優星、よく頑張った」


「……子供扱いしないでよ……」



俺の褒め言葉にムゥと怒りながら、ドアの取っ手に手をかける。心からの言葉を言ったつもりなのに、なんだか怒らせてしまったみたいだ。


……よくわからん。
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