無自覚なまま、愛を蓄えて。

こんなの優星を怖がらせるだけだ。


とりあえず落ち着いて深呼吸。



「……優星。やっと帰ってきたか」



深呼吸してると、ドアの奥から低い声が聞こえた。その声は俺でもゾクッと寒気がするほどの威圧感があった。


隣の優星をそーっと見てみると明らかに怯えている。おそらく、声の主は父親だ。



「た、ただいま、戻りました……遅くなり、申し訳ありません……」


「優星?」



優星の態度の変わりっぷりに動揺が隠せなかったのは俺だった。優星は意外にも冷静で。親に対する口調で話していない。めちゃくちゃ他人行儀だ。


この人が、本当に優星の父親……?



「お前、バイトがないのになんで門限を守らなかった。学校が終わったらまっすぐ家に帰れと言ってるだろうが!」



ーバン!


父親が言い終わらないうちに、中で何かが壊れた音がした。


……これが、優星の父親。ドア越しだから顔は見えないがこれは相当酔っているな。
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