無自覚なまま、愛を蓄えて。
「おい、お前は自分のことしか考えてねぇのかよ」
「……梓、くん?」
気づいたら優星を手で制してこの酔っ払いに怒りの声をあげていた。訳の分からない怒りの感情が湧き上がり、止められなかった。
優星はもう高校生だ。友達の誘いくらい行ってもいいだろう。それに、しっかりと自分のことを考えてバイトもしている。
……なのになんだ?お前は自分のことばかり。もう少し、優星の心配をしたらどうだ。
「あ"あ"?誰だ?テメーは。おい、なんで男がいる」
「梓くん、落ち着いて。お願いだから……」
ドアの奥から殺気立った声色が聞こえた。どうやら俺の存在にようやく気づいたらしい。
ガチャッとドアを開け、優星の親父が少しだけ、顔を出した。
「話はずっと聞いていた。優星の心配もしねぇで、何自分のメシの心配してんだよ。いい歳してしたおっさんが娘に頼って情けねぇと思わないのか?」