無自覚なまま、愛を蓄えて。
自分でも驚くくらい低い声が出た。
このままじゃあ優星まで怖がらせてしまう。そう思ったけど、ここで言わなければ後悔するとも思った。
「自分のメシの心配して何が悪い。優星が門限守らなかったんだ!だから、当然のバツだ。誰だか知らねぇが、他人の家の事情に突っ込んでくんな!」
「お父さん、やめて!」
鋭い怒声と腕が降り掛かってくる。優星の声は聞こえていない。
俺は殴られる、と咄嗟に自分の腕を顔の前に出し、直接殴られるのを避けた。だけど腕に鈍い痛みが走り、思わず顔を歪める。
どうやらこの親父は俺の事を覚えていないらしい。俺も顔を見たがあまりの変わりように驚いた。
顔をあげて、様子を伺うとやせ細って生気の失った顔がそこにはあった。
「梓くん!大丈夫?ごめん、ごめんね……」
「俺は大丈夫。落ち着け、優星」
そんな俺たちを見ていた優星が涙を流しながら腕をさする。