無自覚なまま、愛を蓄えて。

私の心配する内容のメッセージは一通もなかった。


ーガチャ。



「優星、ココアで良かったか?」


「あ、う、うん!ありがとう」



ぼーっとスマホを見ていると梓くんがお盆を抱えて部屋に入ってきた。私は返信は後でとスマホをカバンの中に突っ込む。


とにかく今はお父さんのことなんか考えたくなかった。



「はい」


「……あったかい」



ココアの入ったコップを受け取り、1口飲んだ。暖かなココアと甘さが口いっぱいに広がり、心が落ち着く。



「良かった。まだココア好きで」


「覚えててくれたんだね」


「……当たりめーだろ。お前のことは、何があっても忘れるわけねぇよ」



ーードキッ。


い、今の不意打ちはヤバいって。イケメンの破壊力は心臓に悪いよ〜……。


深い意味なんてないのはわかるのに無駄に心臓がドキドキして上手く呼吸ができない。


というか、よくよく考えれば今好きな人と2人きりってことだよね?
< 60 / 242 >

この作品をシェア

pagetop