無自覚なまま、愛を蓄えて。
梓くんが謝ることなんてないのに……。
私は無意識にそっと梓くんの背中に手を回し、ぎゅっと力を込める。トクントクンと優しい心臓のリズムが聞こえてくる。
「……あのさ、抱きしめた俺が悪いんだけど……お前、それ煽ってる?」
「へ?煽る……?」
もう少しこのまま……と思って顔を埋めた時梓くんからそんなことを聞かれた。
煽るってどういうことだろう。
わ、私……なんか悪いことしたかな?
「はぁー……お前、無自覚なのも大概にしろよな。自分がかわいーってこと、自覚しろ」
「わ、私可愛くないし!梓くん、何言ってるの!」
突然梓くんから“可愛い”って言われて思わず全否定する。だって可愛くないのはホントのことだし、こんな私なんて誰も思ってくれないもん。
こんなふうに話聞いてくれるのは梓くんだけだけど……。自分が可愛いなんてどうしても思えない。
「もうっ。久しぶりに会ったからって、私を見る目、おかしくなったんじゃないの?」