無自覚なまま、愛を蓄えて。
「よしっ。飛ばすぞ!」
「きゃあああ!」
あたふたしている私をよそに、梓くんは遠慮なしにバイクを走らせた。その事に驚いた私は悲鳴を上げ、何が何だか分からぬまま、学校へ向かったのだった。
***
バイクを走らせて数分。
なんとか遅刻ギリギリに学校につき、ヘルメットを乱暴に梓くんへ投げつける。
「あ、おい!」
「へ?」
「今日の放課後、屋上に来いよ!」
「わかった!」
あまり話の内容を気にせず返事をしてしまう。梓くんは授業に出ないのか、そのままバイクと一緒にどこかにいってしまった。
……まぁ、梓くんが学校にいること自体が珍しいのは今に始まったことじゃないしね。
それに、私と梓くんが一緒に学校へ行ってしまったらどんな噂が流れるか……。考えただけでも恐ろしい。
自分勝手な妄想で身震いしながら、私はチャイムがなる寸前に教室に滑り込んだ。