無自覚なまま、愛を蓄えて。
これしか対策が思い浮かばなかった。……というのは嘘では無いからな。
あの父親から逃げる方法はとりあえず俺の家で暮らすこと。それに、JOKERの対策としては必ず俺たちと過ごすこと。
このことが話し合いで優星に伝えられた。
「わかった……ごめんね。いろいろ迷惑かけて」
「迷惑じゃねぇよ。むしろお前はもっと甘えていいくらい。もっと……俺に甘えて」
歩く足を止め、優星の頭を撫でる。
小さな頭が少しくすぐったそうに動いた。
「……ありがとう。じゃ、バイト頑張ってくる!」
「おう!程々にな」
しばらく優星と見つめ合い、頭を撫でていたら優星は元気よく走っていった。
バイト先まですぐそこなので、背中が見えなくなるまで見送った。
「……あー、やべ。俺、持つかな……」
優星が見えなくなると、気を張っていたせいか近くの壁に寄りかかりズルズルと腰が抜けてく。