私の旦那様には3つの顔がありました!?
「お嬢様…、お嬢様……!」
「あ……。いざとなるとやっぱり緊張してきたわ。」
「安心してください。いつも通りのお嬢様で大丈夫です。」
「桔梗……。…さぁ、行くわよ。」
回転式のホテルのドアに沿って歩くと、都内1高価なホテルの豪華な内装に出迎えられた。
「こちらのエスカレーターを登った先に旦那様と奥様がお先に待っておられます。」
「桔梗は上にはいかないの?」
「ええ。旦那様にそう言われておりますので。」
「そう。じゃあ…行ってくる。」
エスカレーターを登ると本当にお父様とお母様が椅子に座って待っていた。
お父様の横には、お父様の秘書が立っている。
お父様の向かいの席には婚約者御一行様が座ると思うからわたしはお父様の横に座っているお母様の隣に座る。
「遅かったな、灯。」
「申し訳ありません。」
「まあまあ。おめでたい日ですし。ね?灯ちゃん」
“お父様にとっては”おめでたい日かもしれないけど、わたしにとっては全然そんなことない。
いざとなると少しだけ嫌な気持ちが……。
いつもより固い顔になっている気がする。
「ええ。ありがとう、お母様。」
「いいのよ、お母さんは嬉しい気持ちでいっぱいなの。」