私の旦那様には3つの顔がありました!?
「はいはい、教えてあげるから。」
「ええ、そうして。」
ようやく俺と目を合わせる灯。
あんなに可愛いかったのに今では子供のように好奇心が抑えきれていないような表情。
赤茶の綺麗な目がキラキラしている。
「灯さ、中学の入学式の日遅刻してきたよね。」
「あぁ、そんなこともあったわね。」
「あの日俺も遅刻してたんだよ実は。俺が灯よりほんの先に学校に着いたから知らなかったでしょ?」
あの日、俺は母さんと喧嘩をした。
まだ中学生だった俺は、自由奔放な母さんのことを理解できるほど大人ではなくて。
母さんも父さんと一緒に出席してくれる予定だった入学式当日。
朝準備を終え、朝食を取りに部屋を移動するといつもはダイニングテーブルに座っている母さんがもう屋敷にはいなくて、父さんに事情を聞いた。
「母さんなら、昨日の夜中にどこかへ旅行に行ってしまったよ。」
と。
その言葉を聞いた俺は糸がプツンと切れ、父さんにまで入学式になんか来なくていいと啖呵をきって家を出た。
学校から屋敷は車で30分程の場所で、交通機関を使ったとしても2時間はかかってしまう。
当然遅刻だ。
頭を冷やして冷静になると、家に戻ったほうがいいということは理解できた。
だけどまだ中学生になりたてだった俺はそんな高くなってしまったプライドを簡単に曲げることはできなくて。