私の旦那様には3つの顔がありました!?
だから、遅刻覚悟で家には戻らない決断をした。
幸いスマートフォンには、クレジットカードが連携された交通系ICカードが登録されていてインターネットで調べながら電車やバスに乗ることはできた。
灯をみつけたのはその道中でのことだった。
銀杏学園中等部の制服は男女ともに珍しい茶色の学ランとセーラー服。
そして学帽とベレー帽といかにも一般の学校の制服とは異なり、銀杏中学の生徒だとわかるのだ。
地下鉄からバスに乗り換えるために外に出てバス停で並んでいると、俺と同じ中学の制服を着た気の強そうな黒髪の女子が乗っていた車から降りて道端の小学生に話しかけているのが見えた。
そして、その小学生を車に乗せるのかと思いきやそんなことはせず運転手と何かを話した後、車が彼女を置いてどこかへ行ってしまったのだ。
現在の時刻は9時。
学校には9時30分までに着いていなければいけない。
あのまま車に乗っていれば時間に間に合っていたはずなのに彼女は小学生に構って一体何をしているんだ。
俺はそう思った。
そうして、彼女は小学生と手を繋ぎそのまま学校とは反対方向に歩いて進んでいった。
微かに聞こえた会話で察するに彼女と手を繋いでいる小学生は、一般小学校の1年生らしく、登校途中に迷子になってしまったようだった。