私の旦那様には3つの顔がありました!?



「物心ついた時からずっと湊のことが好き。三月と付き合ってほしい。」


 と。
 俺はすでに灯のことが好きだったから断った。


 そうするといつもはハキハキはつらつとした表情の彼女が珍しく泣きながらこう言った。


「2番目でもいいから、湊の1番近くに居させてほしいの。だめ?」


 そう言いながら1人掛けソファに座っていた俺に近づいてきてキスをしてきた。


「このまま、三月を湊のものにして?お願いだから。」
「……わかった。」

 いつもは本音を全く言わないはずの様子が変な三月に俺は何もいえず、俺は言われるがまま三月を抱いた。


 内部進学だった俺たちには受験勉強がなく、幼馴染だった頃よりもずっと一緒にいることが増えた。


「湊の真っ黒で艶々な髪、三月には欲しくても手に入らないからすごく綺麗で羨ましい。好きだな。」
「そう?地味じゃない?」


 幼馴染の時と変わらず仲良く毎日を送っていた俺たちだった。
 けれど当然、無意識で灯のことを追ってしまう俺にも三月は気づいて傷ついてしまっていたわけで。


 高校に入学するまで後1週間と言うある日。

「2番目でもいいとか自分で言ったのにやっぱり辛くてどうしようもできないや。」
「三月?」
「ねぇ、湊。今でも1番は坂藤さんなの?」
「……ごめん。」


 “ごめん”俺がそういうと、滅多に泣かない三月がまた泣いてしまった。


「2番でもいいなんて思ってもいないこと言わないほうが良かったな。ごめんね、振り回して。三月と別れてほしい、湊。」
「……わかった。」




 そしてその日俺は、三月が好きだと言っていた黒髪からその時直感で真逆だと思ったミルクティーベージュに髪色を変えた。
 それからはずっとその色にし続けている。


 高校に入学してからも三月との幼馴染関係は変わることがなく、高校3年生の今までも一緒に過ごしてきた。
 三月がそうしてほしいと言っていたから。








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