腹黒御曹司の一途な求婚
神経が張り詰めすぎて、久高邸に着くまでの間で私の顔面はすっかり蒼白になっていたけれど、蒼士のご両親は温かく迎えてくれた。
いかにも高級そうな革張りのソファに座るよう促され、芙由子さんが手ずから淹れた紅茶が振る舞われる。供された温かい紅茶は、いつもより身体に沁み入るようだった。
蒼士のお父様は、事前に芙由子さんから私のことを色々と聞き及んでいたらしい。
結婚に反対どころか、挨拶もそこそこにお父様の口から『結納はいつにしようか?』なんて言葉が飛び出した。
『あなた、気が早すぎないかしら?でも確かに、お日取りだけでも決めておくのはいいかもね。この日とかはどう?ほら、大安の日曜日』
『おお、いいんじゃないか』
お手伝いさんが持ってきた卓上カレンダーを片手に、蒼士のご両親が盛り上がっている。
このまま結納の日どころか結婚式の日まで、今この場で決まってしまいそうだ。
(歓迎してくれているのは、ありがたいんだけど……)
今日は挨拶だけのつもりだったから、テンポの速さに心が追いついていかない。
及び腰になっていると『父さん、母さん』と諌めるような声が隣から聞こえてきた。
『そういうのは自分たちで決めるから。結婚式のことも、家のことも、全部』
もしかしたら私が来る前にも、こんな話が展開されていたのかも……。
最後の一言をやけに強調した蒼士の言葉に、芙由子さんは苦笑いを浮かべながら私を見た。
『そうよね。ごめんなさい、萌黄さん。嬉しくてつい、先走っちゃって……』
『でもお披露目はしていいんじゃないか?ほら、ひと月後にパーティーがあるだろう。そこに萌黄さんも出席してもらえばいい。じゃないとうちの娘はどうかって、私がまた押し売りを受ける羽目になるから……』
少しげんなりした様子で、お父様は遠い目をしている。これまで散々セールスを受けてきたのが見てとれて、ちょっと同情してしまう。
いかにも高級そうな革張りのソファに座るよう促され、芙由子さんが手ずから淹れた紅茶が振る舞われる。供された温かい紅茶は、いつもより身体に沁み入るようだった。
蒼士のお父様は、事前に芙由子さんから私のことを色々と聞き及んでいたらしい。
結婚に反対どころか、挨拶もそこそこにお父様の口から『結納はいつにしようか?』なんて言葉が飛び出した。
『あなた、気が早すぎないかしら?でも確かに、お日取りだけでも決めておくのはいいかもね。この日とかはどう?ほら、大安の日曜日』
『おお、いいんじゃないか』
お手伝いさんが持ってきた卓上カレンダーを片手に、蒼士のご両親が盛り上がっている。
このまま結納の日どころか結婚式の日まで、今この場で決まってしまいそうだ。
(歓迎してくれているのは、ありがたいんだけど……)
今日は挨拶だけのつもりだったから、テンポの速さに心が追いついていかない。
及び腰になっていると『父さん、母さん』と諌めるような声が隣から聞こえてきた。
『そういうのは自分たちで決めるから。結婚式のことも、家のことも、全部』
もしかしたら私が来る前にも、こんな話が展開されていたのかも……。
最後の一言をやけに強調した蒼士の言葉に、芙由子さんは苦笑いを浮かべながら私を見た。
『そうよね。ごめんなさい、萌黄さん。嬉しくてつい、先走っちゃって……』
『でもお披露目はしていいんじゃないか?ほら、ひと月後にパーティーがあるだろう。そこに萌黄さんも出席してもらえばいい。じゃないとうちの娘はどうかって、私がまた押し売りを受ける羽目になるから……』
少しげんなりした様子で、お父様は遠い目をしている。これまで散々セールスを受けてきたのが見てとれて、ちょっと同情してしまう。