腹黒御曹司の一途な求婚
十三年ぶりの
「…………」
父を目の前にして、私は氷漬けにでもされてしまったかのように硬直していた。
心臓が痛いほど脈を打っている。
覚悟していたこととはいえ、いざその時になると頭は真っ白になった。
胸に渦巻くこの感情を上手く形容することができない。
悲しみとも怒りとも違う。出会ってはいけない人に出会ってしまった、そんな焦燥によく似ていた。
父は大きく目を見開き、まるで幻覚でも見ているかのようにひたすらに私を凝視している。
写真もなく、記憶の中の父の姿は朧げだ。あの頃に比べて父の体型は丸みを帯びたような気がするけれど、それも定かじゃない。
それでも目の前にいるのが間違いなく自分の父親だと判るのは、やっぱり親子だから……。
「久しぶりだな……元気にしていたか……?」
「…………」
「それは……お母さんの振袖だな……。萌黄、美しくなったな……お母さんに、本当によく似ている……」
感慨深そうに目を細めた父が、距離を詰めてくる。そこに、私がこの場にいることに対する非難は見受けられないけれども……。
私は思わず後ずさった。足首を着物の裾がサッと撫でる。
(どうして……そんな……何もなかったように普通に話せるの……?)
とっくの昔に捨てたはずの娘と――
傍から見たら親子の感動の再会なのかもしれない。けれども私は喜ぶことなんてできなかった。
モヤモヤが胸を覆い尽くして、ひどく息苦しくを感じる。衿合わせが乱れることも失念して胸元をギュッと押さえた。
父を目の前にして、私は氷漬けにでもされてしまったかのように硬直していた。
心臓が痛いほど脈を打っている。
覚悟していたこととはいえ、いざその時になると頭は真っ白になった。
胸に渦巻くこの感情を上手く形容することができない。
悲しみとも怒りとも違う。出会ってはいけない人に出会ってしまった、そんな焦燥によく似ていた。
父は大きく目を見開き、まるで幻覚でも見ているかのようにひたすらに私を凝視している。
写真もなく、記憶の中の父の姿は朧げだ。あの頃に比べて父の体型は丸みを帯びたような気がするけれど、それも定かじゃない。
それでも目の前にいるのが間違いなく自分の父親だと判るのは、やっぱり親子だから……。
「久しぶりだな……元気にしていたか……?」
「…………」
「それは……お母さんの振袖だな……。萌黄、美しくなったな……お母さんに、本当によく似ている……」
感慨深そうに目を細めた父が、距離を詰めてくる。そこに、私がこの場にいることに対する非難は見受けられないけれども……。
私は思わず後ずさった。足首を着物の裾がサッと撫でる。
(どうして……そんな……何もなかったように普通に話せるの……?)
とっくの昔に捨てたはずの娘と――
傍から見たら親子の感動の再会なのかもしれない。けれども私は喜ぶことなんてできなかった。
モヤモヤが胸を覆い尽くして、ひどく息苦しくを感じる。衿合わせが乱れることも失念して胸元をギュッと押さえた。