腹黒御曹司の一途な求婚
(…………貴子、さん)
貴子さんが、蒼士と話している。
どうして……?二人で一体、何を話しているの……?
(ひょっとして、私のこと……?)
ツインタワーで出会った時の、貴子さんの侮蔑に満ちた眼差しが脳裏に蘇る。
『あなたはいらない子なの』
『この土地から出て行ってちょうだい。不愉快だわ』
鋭い棘のような貴子さんの言葉が脳内で反芻する。
もしかすると、貴子さんは蒼士に私と別れるように言っているんじゃ。そうして、目障りな私をこの地から追いやろうとしているとしたら。
流れる血が凍りついていくように、みるみると体が冷えていく。
周囲のざわめきが一気に遠ざかっていくようだった。でも自分の鼓動の音だけは内側で激しく鳴り響いている。
「ありゃ、誰かと話してんね。これだと控室の方で待ってた方がいいかもなぁ。……美濃さん?」
伊勢谷くんの声でハッと我に返った。
途端に音が溢れ出すように私の耳に飛び込んでくる。一気に鼓膜が震えて、目眩を覚えるほど。
「う、うん……そう、だね……」
私はちゃんと笑えていただろうか。
伊勢谷くんの問いかけに頷くと、蒼士と貴子さんに背を向ける形でまた歩き出した。
バクバクと荒れ狂う鼓動は鳴り止まないまま。
胸の辺りを何度も撫でさすり、ともすれば荒くなる呼吸を鎮めようとするけれど、上手くいかない。
それでもなんとか控室のある通路まで辿り着いた時、私は再び足を止めた。
「萌黄!ここにいたのか!」
待ち構えていたように駆け寄ってきたのは、父だった。
貴子さんが、蒼士と話している。
どうして……?二人で一体、何を話しているの……?
(ひょっとして、私のこと……?)
ツインタワーで出会った時の、貴子さんの侮蔑に満ちた眼差しが脳裏に蘇る。
『あなたはいらない子なの』
『この土地から出て行ってちょうだい。不愉快だわ』
鋭い棘のような貴子さんの言葉が脳内で反芻する。
もしかすると、貴子さんは蒼士に私と別れるように言っているんじゃ。そうして、目障りな私をこの地から追いやろうとしているとしたら。
流れる血が凍りついていくように、みるみると体が冷えていく。
周囲のざわめきが一気に遠ざかっていくようだった。でも自分の鼓動の音だけは内側で激しく鳴り響いている。
「ありゃ、誰かと話してんね。これだと控室の方で待ってた方がいいかもなぁ。……美濃さん?」
伊勢谷くんの声でハッと我に返った。
途端に音が溢れ出すように私の耳に飛び込んでくる。一気に鼓膜が震えて、目眩を覚えるほど。
「う、うん……そう、だね……」
私はちゃんと笑えていただろうか。
伊勢谷くんの問いかけに頷くと、蒼士と貴子さんに背を向ける形でまた歩き出した。
バクバクと荒れ狂う鼓動は鳴り止まないまま。
胸の辺りを何度も撫でさすり、ともすれば荒くなる呼吸を鎮めようとするけれど、上手くいかない。
それでもなんとか控室のある通路まで辿り着いた時、私は再び足を止めた。
「萌黄!ここにいたのか!」
待ち構えていたように駆け寄ってきたのは、父だった。