腹黒御曹司の一途な求婚
「……お父さんからね、美濃の家に戻ってきてほしいって言われたの。貴子さんとの間に子供ができなかったから、跡取りがいないらしくて。私に子供が生まれたら、一人は菊乃屋の跡取りとして貰いたいんだって」
融資云々は伏せて、父から言われたことを蒼士に話した。
本当に、清々しいほど私自身は必要とされていないことに自嘲が漏れる。
私を抱きしめる蒼士の腕がピクリと震えた。
「萌黄は、お父さんの言う通りにしたい?」
いつも聞く声より一段低くなっていて、私を蔑ろにする父へ怒ってくれているのだと分かる。それでも、私が美濃の家に戻りたいと言ったら尊重してくれるに違いない。
どこまでも、私に優しい人だから。
「しない……美濃の家には戻らない……私は、お父さんの都合のいい駒じゃないから……」
「そうか……」
不意に肩に重みが乗って背後を見やると、蒼士が私の肩に顎を乗せてこちらを見つめていた。
「俺がずっと萌黄のそばにいる。俺は絶対、萌黄を離したりしない」
「…………うん」
真摯な眼差しに心を打たれて、感極まった私は頷くことしかできなかった。
顔が自然と近づいていき、唇が触れ合う。啄むように何度も口付けを交わしていると、幸せに溺れてしまいそうになった。
酸素を取り込もうと開いた口から舌を差し込まれ、お湯が跳ねる音とは違う淫らな水音がバスルームに響く。
私の腹部を撫で回していた蒼士の手が、ゆっくりと太腿の内側に触れようとした時、ふとあることを思い出した。
今聞かなくてもいいことだけれど、一旦思い出してしまうとモヤモヤしてきて、私はトントンと蒼士の上腕を指で叩いた。
融資云々は伏せて、父から言われたことを蒼士に話した。
本当に、清々しいほど私自身は必要とされていないことに自嘲が漏れる。
私を抱きしめる蒼士の腕がピクリと震えた。
「萌黄は、お父さんの言う通りにしたい?」
いつも聞く声より一段低くなっていて、私を蔑ろにする父へ怒ってくれているのだと分かる。それでも、私が美濃の家に戻りたいと言ったら尊重してくれるに違いない。
どこまでも、私に優しい人だから。
「しない……美濃の家には戻らない……私は、お父さんの都合のいい駒じゃないから……」
「そうか……」
不意に肩に重みが乗って背後を見やると、蒼士が私の肩に顎を乗せてこちらを見つめていた。
「俺がずっと萌黄のそばにいる。俺は絶対、萌黄を離したりしない」
「…………うん」
真摯な眼差しに心を打たれて、感極まった私は頷くことしかできなかった。
顔が自然と近づいていき、唇が触れ合う。啄むように何度も口付けを交わしていると、幸せに溺れてしまいそうになった。
酸素を取り込もうと開いた口から舌を差し込まれ、お湯が跳ねる音とは違う淫らな水音がバスルームに響く。
私の腹部を撫で回していた蒼士の手が、ゆっくりと太腿の内側に触れようとした時、ふとあることを思い出した。
今聞かなくてもいいことだけれど、一旦思い出してしまうとモヤモヤしてきて、私はトントンと蒼士の上腕を指で叩いた。