腹黒御曹司の一途な求婚
それは車内で熱烈に口付けを交わす瞬間を写していた。助手席を跨ぐように覆い被さった男性が、女性に情熱的なキスをしている。
写真は何枚かあり、アングルを変えて男女が睦み合う様子を捉えていた。中には服が乱れた際どいシーンを写したものもあり……二人の顔も、よく分かった。
「キャーーーーー!!!!」
金切り声と共に、貴子さんがテーブルへ覆いかぶさるようにして自身の痴態が収められた写真をかき集めた。
よっぽど衝撃だったのか、父はあんぐりと口を開けて愕然と貴子さんを見つめている。私も驚きを隠せない。
「美濃社長」
異様な空気の中、まるで空間を切り裂いてしまいそうな鋭利な声が父に向かって放たれる。
茫然自失状態だった父の顔がハッとする。まるで鬼にでも出くわしたように、青ざめていた顔色がさらに蒼白していた。
そんな父の様子に構うことなく、蒼士は冷淡な面持ちで話を進める。
「あなたは夫人が撮影した僕の写真を用いて、萌黄を脅したんですね?この写真がバラまかれたくなかったら、僕から融資の確約を引き出せとでも言ったんでしょうか?」
「い、いや……そんなことは……」
その通りなだけに否定できない父がモゴモゴと口籠っている。
融資のことは……蒼士に話すつもりはなかったのだけれど、父から呼び出されたと相談した際に芋づる式に聞き出されてしまっていた。
その時も怒っていたけれど、今ほどじゃない。今の蒼士の背後にはドス黒いオーラが立ち上っている。
「美濃社長が当行にご相談いただいているのは、新規の結婚式場の建設費用ですね。既に担当からも融資ができかねる理由は申し上げておりますが、この際、僕の方からもはっきりお伝えしておきましょう」
シンと静まり返った個室に、ゴクリと父が唾を呑み込む音が響く。
写真は何枚かあり、アングルを変えて男女が睦み合う様子を捉えていた。中には服が乱れた際どいシーンを写したものもあり……二人の顔も、よく分かった。
「キャーーーーー!!!!」
金切り声と共に、貴子さんがテーブルへ覆いかぶさるようにして自身の痴態が収められた写真をかき集めた。
よっぽど衝撃だったのか、父はあんぐりと口を開けて愕然と貴子さんを見つめている。私も驚きを隠せない。
「美濃社長」
異様な空気の中、まるで空間を切り裂いてしまいそうな鋭利な声が父に向かって放たれる。
茫然自失状態だった父の顔がハッとする。まるで鬼にでも出くわしたように、青ざめていた顔色がさらに蒼白していた。
そんな父の様子に構うことなく、蒼士は冷淡な面持ちで話を進める。
「あなたは夫人が撮影した僕の写真を用いて、萌黄を脅したんですね?この写真がバラまかれたくなかったら、僕から融資の確約を引き出せとでも言ったんでしょうか?」
「い、いや……そんなことは……」
その通りなだけに否定できない父がモゴモゴと口籠っている。
融資のことは……蒼士に話すつもりはなかったのだけれど、父から呼び出されたと相談した際に芋づる式に聞き出されてしまっていた。
その時も怒っていたけれど、今ほどじゃない。今の蒼士の背後にはドス黒いオーラが立ち上っている。
「美濃社長が当行にご相談いただいているのは、新規の結婚式場の建設費用ですね。既に担当からも融資ができかねる理由は申し上げておりますが、この際、僕の方からもはっきりお伝えしておきましょう」
シンと静まり返った個室に、ゴクリと父が唾を呑み込む音が響く。