腹黒御曹司の一途な求婚
つまり『要注意先』に分類されている菊乃屋は、あまり景気がよろしくないというわけで。
小さい頃は、ベリが丘にある本店にもよく遊びに行っていたので、そこで働いていた人たちが苦労をしているという事実には胸が痛む。
けれど私にはどうすることもできない。ごめんなさい、と心の中で謝って、また蒼士の話に耳を傾けた。
「それに見積もりも拝見させていただきましたが、建設業者への発注費用も、相場よりかなり高額ですね。カミエダウェディングは美濃夫人のご実家の家業と伺っておりますが、今回の建設はお舅様が懇意にされている業者に発注予定だったとか。水増し請求でもして懐に収めるつもりだったのかもしれませんね。美濃夫人は坪井専務が横領した金を受け取っているようですから、話を聞いたお舅様が似たような真似をしても不思議ではありませんし」
「お、横領?!」
「なっ、なんでそれを……」
またもやとんでもない爆弾が投げられ、父が目の色を変えて椅子から立ち上がった。貴子さんは一歩下がって狼狽しながらも、自身の失言に気が付いて慌てて口元を押さえている。
けれども父は聞き逃さなかったようで、顔を真っ赤にして貴子さんの元へ詰め寄った。
「どういうことだ、貴子!!坪井が、横領だと……?!おまえ、知っていたのか!!」
「し、知らない!知らないわ!私は……そんな……」
「でも坪井専務から金は受け取っているでしょう?彼が、菊乃屋の口座から引き出した金を全額あなたに送金していることは知っていますよ」
「ど、どうして知っているのよ!!」
「なっ……貴子、おまえ!な、な、なんてことをしてくれたんだ!!」
「あ……ち、違うの!私が頼んだんじゃないわ!坪井さんが勝手に……」
「そんな言い訳が通じると思っているのか!!」
父の怒声と貴子さんの叫喚が乱れ飛び交い、個室内は騒然としていた。
不倫、横領……とんでもない事実が飛び出してきて、私はずっと呆気に取られている。
混沌とする場を鎮めたのは、やっぱり蒼士だった。
小さい頃は、ベリが丘にある本店にもよく遊びに行っていたので、そこで働いていた人たちが苦労をしているという事実には胸が痛む。
けれど私にはどうすることもできない。ごめんなさい、と心の中で謝って、また蒼士の話に耳を傾けた。
「それに見積もりも拝見させていただきましたが、建設業者への発注費用も、相場よりかなり高額ですね。カミエダウェディングは美濃夫人のご実家の家業と伺っておりますが、今回の建設はお舅様が懇意にされている業者に発注予定だったとか。水増し請求でもして懐に収めるつもりだったのかもしれませんね。美濃夫人は坪井専務が横領した金を受け取っているようですから、話を聞いたお舅様が似たような真似をしても不思議ではありませんし」
「お、横領?!」
「なっ、なんでそれを……」
またもやとんでもない爆弾が投げられ、父が目の色を変えて椅子から立ち上がった。貴子さんは一歩下がって狼狽しながらも、自身の失言に気が付いて慌てて口元を押さえている。
けれども父は聞き逃さなかったようで、顔を真っ赤にして貴子さんの元へ詰め寄った。
「どういうことだ、貴子!!坪井が、横領だと……?!おまえ、知っていたのか!!」
「し、知らない!知らないわ!私は……そんな……」
「でも坪井専務から金は受け取っているでしょう?彼が、菊乃屋の口座から引き出した金を全額あなたに送金していることは知っていますよ」
「ど、どうして知っているのよ!!」
「なっ……貴子、おまえ!な、な、なんてことをしてくれたんだ!!」
「あ……ち、違うの!私が頼んだんじゃないわ!坪井さんが勝手に……」
「そんな言い訳が通じると思っているのか!!」
父の怒声と貴子さんの叫喚が乱れ飛び交い、個室内は騒然としていた。
不倫、横領……とんでもない事実が飛び出してきて、私はずっと呆気に取られている。
混沌とする場を鎮めたのは、やっぱり蒼士だった。