腹黒御曹司の一途な求婚
「貴子さん、私はあなたになんと言われようとも幸せになります。蒼士も、あなたには渡しません」
「――ッ!!生意気言ってんじゃないわよ!!」
声を張り上げた貴子さんが、私に向かって勢いよく手を振り下ろす。
叩かれる、そう思ったのは一瞬だった。
パシッと肌がぶつかる音と共に、蒼士が貴子さんの腕を掴んで制してくれたのだ。
「なっ……離しなさいよ!」
「離すわけないだろう。俺の萌黄を傷つけてたまるか」
射殺さんばかりの鋭い眼光を向けられ、貴子さんは怯んだように肩を震わせる。
「あなたの境遇には同情の余地があるのかもしれない。だが、あなたが不幸であることに萌黄は何ら関係ない。あなたのそれはただ逆恨みだ。そんな身勝手な理由で萌黄を傷つけることは俺が許さない。もう二度と、萌黄に近づくな」
冷然とした面持ちで静かに怒る蒼士の気迫は鬼気迫るものがあった。それを真っ向から受けた貴子さんは、戦意を失ったかのように腕をダランと下ろした。
「なによ……どうして……どうしてよぉぉ……」
悔しさが滲む嗚咽が個室内に響く。
貴子さんは崩れ落ちるようにして、床にへたり込んだ。
その様子を横目に、蒼士は静かに席を立った。
「行こう、萌黄」
「……うん」
(さようなら、お父さん、貴子さん……)
もう二度と会うことはない二人に心の中で別れを告げ、私たちはその場から立ち去った。
「――ッ!!生意気言ってんじゃないわよ!!」
声を張り上げた貴子さんが、私に向かって勢いよく手を振り下ろす。
叩かれる、そう思ったのは一瞬だった。
パシッと肌がぶつかる音と共に、蒼士が貴子さんの腕を掴んで制してくれたのだ。
「なっ……離しなさいよ!」
「離すわけないだろう。俺の萌黄を傷つけてたまるか」
射殺さんばかりの鋭い眼光を向けられ、貴子さんは怯んだように肩を震わせる。
「あなたの境遇には同情の余地があるのかもしれない。だが、あなたが不幸であることに萌黄は何ら関係ない。あなたのそれはただ逆恨みだ。そんな身勝手な理由で萌黄を傷つけることは俺が許さない。もう二度と、萌黄に近づくな」
冷然とした面持ちで静かに怒る蒼士の気迫は鬼気迫るものがあった。それを真っ向から受けた貴子さんは、戦意を失ったかのように腕をダランと下ろした。
「なによ……どうして……どうしてよぉぉ……」
悔しさが滲む嗚咽が個室内に響く。
貴子さんは崩れ落ちるようにして、床にへたり込んだ。
その様子を横目に、蒼士は静かに席を立った。
「行こう、萌黄」
「……うん」
(さようなら、お父さん、貴子さん……)
もう二度と会うことはない二人に心の中で別れを告げ、私たちはその場から立ち去った。