腹黒御曹司の一途な求婚
 蒼士はこうして隙あらば私を甘やかして、ドロドロに溶かそうとしてくる。
 このまま甘やかされていると、ダメ人間になりそうでちょっと怖い。でもそれと同じくらい嬉しいと思ってしまう。愛されていると、目に見えて実感できるから。
 
 ふと私も大好きだと、そう伝えたくなったけれど、脈絡なく告げるのは恥ずかしくて。蒼士の手を普段よりも強く握ることで、それを伝えることにした。

 レストランに併設されているカフェは、サンルームのようなガラス張りになっていて、広大な庭園をよく眺めることができた。

 ル・ボア――フランス語で小さな森を意味する――という名の通り、緑豊かな西洋庭園は、春の芽吹きに合わせて色とりどりの花を咲かせている。
 
 テラス席もあり、自然に囲まれながらアフタヌーン・ティーを味わう、というのが人気の楽しみ方らしい。実際、三段式のティースタンドがあちこちのテーブルで見受けられた。

 よく晴れた休日の午後、テラス席はすでに満席だ。
 運良く空いていた店内の中央の席に座り、オーダーしたのはローストビーフとレタス、それに卵が挟まった、ミックスサンドイッチ。
 アフタヌーン・ティーは事前予約が必須なのと、ディナーに楽しみを取っておきたいという気持ちもあったので、またの機会にしておいた。

 運ばれてきたサンドイッチはお皿に四切れ乗っていて、二切れずつシェアして食べる。
 手のひらサイズだったけれど意外にボリュームがあり、食べ終えるとかなり充足感があった。
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