腹黒御曹司の一途な求婚
 と同時に、リストの中でエグゼクティブラウンジ経由での予約が入っているかどうかのチェックも忘れない。
 
 エグゼクティブラウンジはスイートルーム宿泊のお客様とホテルの超お得意様が利用できる専用のラウンジだ。
 そこにはホテルのコンシェルジュサービスとは別に、ラウンジ専用のコンシェルジュが置かれていて、顧客のありとあらゆる要望に応えている。

 ラウンジの会員資格を持つお客様がホテルのレストランを利用する際は、大抵そのコンシェルジュ経由で予約が入る。
 予約が入っていると、お店に少し緊張が走たりもする。
 
 担当テーブル制は、注文漏れやサーブミスを極力減らし、サービスの質を高めることができる反面、たった一人のスタッフの印象でレストラン、しいてはホテル全体の印象が決定づけられてしまうというリスクもある。
 お客様に優劣をつけるつもりはないけれど、ホテルの上客の機嫌をここ(プレジール)で損ねるわけにはいかないので。

 そして今日、まさにエグゼクティブラウンジ経由での予約が一件入っていて。
 その予約者の名前が目に入った瞬間、心臓がドキリと跳ねた。

(久高、蒼士……)

 心の中で呟くと、脳裏に蘇るのは学ラン姿の爽やかな風貌の男の子の姿。
 もう十三年も前の記憶だというのに、その映像は鮮明だ。笑うと頬骨の辺りに小さなえくぼができることまでつぶさに覚えている。
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