腹黒御曹司の一途な求婚
学生時代は勉強に、そして社会人になってからは仕事に打ち込んでいて、恋愛をずっと遠ざけていた私にとって、久高くんの存在は自分が思っていた以上に大きかったのかもしれない。
初恋を拗らせていた自覚はなかったけれども、現に今めちゃくちゃショックを受けている。
鉛を飲み込んだように体が重かった。
彼とその恋人(あるいは奥様)を笑顔で出迎えなければならないのは、ちょっとしんどい。このままずっと立ち上がりたくなかった。
(でも、仮に彼女がいなくても付き合えるわけじゃないし、そもそも知り合いだってバレちゃいけないし……)
過去の私を知っていて、なおかつ上流階級に身を置く久高くんは、関わってはいけない相手だ。……「誓約書」でそう定められているから。
無情な現実を思い出して、ちょっとシュンとした。たちまち胸が苦しくなって、深く長いため息を吐く。
すると胸に溜まった憂鬱も一緒に出ていって、少し気分が軽くなったような気がしないでもない。いや、軽くなったと思うことにする。
(よし、切り替え切り替え!VIPの予約が入ったことを喜ばなきゃ!久高くんくらいのお金持ちなら、ドリンクもバンバン頼んでくれそうな気がするし!ボトル二本くらい注文してくれないかなー)
気持ちをホテリエモードに無理やり切り替え、気合いを入れるべく肩を上げ下げした。
ディナー営業前のミーティングまで残り三十分。萎えかかっていたやる気をなんとか奮い立たせて、私はまたタブレットに向き直った。
初恋を拗らせていた自覚はなかったけれども、現に今めちゃくちゃショックを受けている。
鉛を飲み込んだように体が重かった。
彼とその恋人(あるいは奥様)を笑顔で出迎えなければならないのは、ちょっとしんどい。このままずっと立ち上がりたくなかった。
(でも、仮に彼女がいなくても付き合えるわけじゃないし、そもそも知り合いだってバレちゃいけないし……)
過去の私を知っていて、なおかつ上流階級に身を置く久高くんは、関わってはいけない相手だ。……「誓約書」でそう定められているから。
無情な現実を思い出して、ちょっとシュンとした。たちまち胸が苦しくなって、深く長いため息を吐く。
すると胸に溜まった憂鬱も一緒に出ていって、少し気分が軽くなったような気がしないでもない。いや、軽くなったと思うことにする。
(よし、切り替え切り替え!VIPの予約が入ったことを喜ばなきゃ!久高くんくらいのお金持ちなら、ドリンクもバンバン頼んでくれそうな気がするし!ボトル二本くらい注文してくれないかなー)
気持ちをホテリエモードに無理やり切り替え、気合いを入れるべく肩を上げ下げした。
ディナー営業前のミーティングまで残り三十分。萎えかかっていたやる気をなんとか奮い立たせて、私はまたタブレットに向き直った。