腹黒御曹司の一途な求婚
「そ、そういう久高くんは彼女たくさんいるんでしょ?」

 動揺がまだ続いていたようで、意図せず変な言い回しになってしまう。
 久高くんは一瞬キョトンとしたかと思うと、プッと噴き出して笑った。

「たくさんって、なんだそれ。全然いないよ」
「で、でも、婚約者はいたじゃない」
「婚約はしてないって。あの人とは親からの紹介でお見合いしただけ。会ったのもあの日で三回目くらいだし、手すら握ってない。そもそもお見合いだって、俺に恋人が全然できないから、そろそろ結婚しろって親に勧められて仕方なくだよ」
「ええ……彼女ができないとか絶対嘘でしょ。こんなにカッコいいのに……」

 思わず本音がポロッとこぼれる。
 すると久高くんは頬杖をついて、こちらを覗き込んでくる。アルコールで赤く染まった目元がとても色っぽい。
 艶めいた視線を送られたせいで、ドキドキは止まらなかった。

「嬉しいな、美濃さんにそう言ってもらえて」

 眩いイケメンスマイルが返ってきて、私は思わず目を眇めた。美麗すぎて直視できない。
 褒め言葉を素直に受け取るだけでなく、こちらが喜ぶ台詞を付け加えることも欠かさない。なんだろう、この人は。人たらしなんだろうか。

 外見も中身も全てにおいて圧倒的なイケメンオーラを放つ久高くんにたじろいで、私は間抜けに口をパクパクとさせた。返す言葉が見つからない。
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