腹黒御曹司の一途な求婚
「ん……ふぅ……はぁ、あ、久高く、ん……」

 寝室のクイーンサイズのベッドに横たわる私の上に覆いかぶさった久高くんが、何度も唇を重ね合わせる。
 最初は戸惑った舌を絡ませる深いキスも数を重ねるごとに慣れていき、私も恐る恐るとではあるけれども、自ら舌を差し出していた。

 絡み合う熱が、混ざり合う唾液が、交わされる吐息が、私の脳髄をクラクラと麻痺させていく。
 キスってこんなに気持ちいいんだ……。
 口蓋を舐め上げる彼の舌の動きに酔いながら、私は漠然とそんなことを思った。

「髪、下ろしてるのも可愛い」

 不意に唇を離した久高くんが、ベッドの上に広がる私の長い黒髪を一房掬い上げて口付ける。

 この前再会した時は仕事中だったので夜会巻きにしていたし、今日も髪をまとめてバレッタで留めていた。
 彼の前で髪を下ろすのは今が初めて。たかが髪型一つでも、彼に気に入ってもらえたことが嬉しい。
 
「萌黄の可愛いところ、全部見せてほしい」

 そう言って久高くんは私の首元に結ばれていたボウタイをシュルリと解いた。
 彼の瞳には隠しきれない情欲の熾火が灯っている。己を渇望されているのだと実感すると、お腹の奥がズクリと疼いた。
 
 今までに感じたことのない感覚。
 でも決して嫌じゃなかった。
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