腹黒御曹司の一途な求婚
過去、そして未来
外へ出るやいなや、晩秋の冷たい夜風がアルコールで火照った頬を打ちつけてくる。
特別貴賓室の横に設置されているプライベートデッキはそれなりの広さがあり、隅には屋外用の二人掛けのソファが設置されていた。
デッキに出る際、野掘さんがジャケットと貸し出し用のウールのブランケットを持ってきてくれたのは助かった。
ソファの近くに小型のエアーヒーターが設置されているとはいえ、遮るもののない海上は吹き荒ぶ風によってかなり冷える。
海風にあおられる髪を押さえつつ、私は久高くんと一緒にソファへ腰掛けた。
黒い海の向こうには、煌々と輝く陸地から星空へと翔け上がるジェット機が見える。
私の心は正反対に、暗く冷たい海の底に沈んでいくようだった。
幻想的な光の海を遠くに眺めながら、私は重たい口を開いた。
「あの……前も言った通りだけど、やっぱり久高くんとは、お付き合いはできません。その……あの時はちゃんと、あの、避妊も、してくれてたと思うし、責任を感じる必要もないから……だから、あの、ごめんなさい……」
「……理由を、聞いてもいい?」
少しの沈黙のあと、久高くんは心悲しそうな微笑みを頬に貼り付けながらも穏和な口調でそう訊ねた。
私は今日、彼に全てを打ち明けようと思っていた。それが、私が果たせる最後の誠意だから。
私は俯くように頷いた後で、意を決して話し始めた。
「私、約束してるの。昔の私を知る人と、絶対に関わらないって。その、お父さんと……」
「……どうしてか、聞いても?」
「うん……ちょっと長くなるんだけど……」
そう前置きして、私はポツリポツリと苦い苦い思い出を語ることにした。
特別貴賓室の横に設置されているプライベートデッキはそれなりの広さがあり、隅には屋外用の二人掛けのソファが設置されていた。
デッキに出る際、野掘さんがジャケットと貸し出し用のウールのブランケットを持ってきてくれたのは助かった。
ソファの近くに小型のエアーヒーターが設置されているとはいえ、遮るもののない海上は吹き荒ぶ風によってかなり冷える。
海風にあおられる髪を押さえつつ、私は久高くんと一緒にソファへ腰掛けた。
黒い海の向こうには、煌々と輝く陸地から星空へと翔け上がるジェット機が見える。
私の心は正反対に、暗く冷たい海の底に沈んでいくようだった。
幻想的な光の海を遠くに眺めながら、私は重たい口を開いた。
「あの……前も言った通りだけど、やっぱり久高くんとは、お付き合いはできません。その……あの時はちゃんと、あの、避妊も、してくれてたと思うし、責任を感じる必要もないから……だから、あの、ごめんなさい……」
「……理由を、聞いてもいい?」
少しの沈黙のあと、久高くんは心悲しそうな微笑みを頬に貼り付けながらも穏和な口調でそう訊ねた。
私は今日、彼に全てを打ち明けようと思っていた。それが、私が果たせる最後の誠意だから。
私は俯くように頷いた後で、意を決して話し始めた。
「私、約束してるの。昔の私を知る人と、絶対に関わらないって。その、お父さんと……」
「……どうしてか、聞いても?」
「うん……ちょっと長くなるんだけど……」
そう前置きして、私はポツリポツリと苦い苦い思い出を語ることにした。