腹黒御曹司の一途な求婚
母の死から五年が経とうとしていたある日、父は私に、再婚したい相手がいると告げてきた。
突然の話だったからすごく驚いた。
でも母を忘れようとする父を寂しく思いはしたものの、反対するつもりはなかった。
おめでとう、と言おうとした時だった。
次に父が発した言葉に、私は脳髄を揺さぶられるほどの強い衝撃を受けた。
『相手の女性が少し年下でね……それで……その……義理の娘がいるのは受け入れられないと言っていて……だから萌黄、おまえに……その、この家を出て行ってほしいんだ』
告げられた瞬間、私は五感が全て削げ落ちたような気になった。
奈落の底に落ちてしまったかのように、目の前が真っ暗になって何も聞こえなくなる。
自分が座っているのか立っているのか、それすらも分からなくなってただ茫然と父を見つめた。
(私が……出て行く……?この家を……?)
何かの間違いだと思いたかった。
けれども父は後ろめたそうに、愕然とする私に向かって早口で今後の私の処遇を語り始めた。
『おまえの面倒は高田のお祖父さんとお祖母さんに頼んである。学費も生活費も心配いらない。おまえの口座にまとめて振り込んでおくから。今の学校は、転校してもらうことになるが……』
高田のお祖父さんお祖母さんとは母方の祖父母のことだ。母が死んで以降疎遠になっていたけれど、いつも私のことを慈しんでくれていた。
嘘でも冗談でもなく、父は本気で私を追いやろうとしているのだと、私はようやく思い至った。
それでもまだこの現実を受け止めきれない。
突然の話だったからすごく驚いた。
でも母を忘れようとする父を寂しく思いはしたものの、反対するつもりはなかった。
おめでとう、と言おうとした時だった。
次に父が発した言葉に、私は脳髄を揺さぶられるほどの強い衝撃を受けた。
『相手の女性が少し年下でね……それで……その……義理の娘がいるのは受け入れられないと言っていて……だから萌黄、おまえに……その、この家を出て行ってほしいんだ』
告げられた瞬間、私は五感が全て削げ落ちたような気になった。
奈落の底に落ちてしまったかのように、目の前が真っ暗になって何も聞こえなくなる。
自分が座っているのか立っているのか、それすらも分からなくなってただ茫然と父を見つめた。
(私が……出て行く……?この家を……?)
何かの間違いだと思いたかった。
けれども父は後ろめたそうに、愕然とする私に向かって早口で今後の私の処遇を語り始めた。
『おまえの面倒は高田のお祖父さんとお祖母さんに頼んである。学費も生活費も心配いらない。おまえの口座にまとめて振り込んでおくから。今の学校は、転校してもらうことになるが……』
高田のお祖父さんお祖母さんとは母方の祖父母のことだ。母が死んで以降疎遠になっていたけれど、いつも私のことを慈しんでくれていた。
嘘でも冗談でもなく、父は本気で私を追いやろうとしているのだと、私はようやく思い至った。
それでもまだこの現実を受け止めきれない。