腹黒御曹司の一途な求婚
「いや、そうでもないかな」
「え?なに、おまえ。まさか彼女できたのか?!」
「まだ違う」
「まだってなんだよ!勿体つけんな、早く言え!」
駿の目がキラキラ輝いている。純粋な祝福ではなく、主に好奇心で。
その様子に呆れつつも、俺は言葉を続けた。隠し立てしたところで、こいつにはどうせバレる。
「美濃さんって覚えてるか?中等部まで一緒だった、ほら、菊乃屋の……」
「菊乃屋……?ああ!美濃さんか!そういえばいたなぁ……懐かし……確か後妻さんと揉めて追い出されちゃったんだったっけ?」
ソファの背もたれに背中をダランと預けた駿が気の毒そうな声を漏らす。
先日萌黄の口から直接聞いた事実とは異なるが、駿の話は、当時突然姿を消した萌黄に関して学校でまことしやかに流れていた噂そのものだった。
美濃家の当主が実の娘を捨てて、若い後妻に走った――そんな胸糞悪い噂話は当時の保護者ネットワークを通じて瞬く間に広がった。
あの学校の保護者は人の親であると同時に、政財界に影響力を発揮する人物ばかりだ。
富裕層を相手に商売をする高級呉服店の菊乃屋は、この眉をひそめる噂話(……ほぼ事実だが)のせいで、かなりの経営不振に陥っていた。
俺の母親もその噂を耳に入れて以降、菊乃屋から他の呉服屋へ鞍替えしている。
「え?なに、おまえ。まさか彼女できたのか?!」
「まだ違う」
「まだってなんだよ!勿体つけんな、早く言え!」
駿の目がキラキラ輝いている。純粋な祝福ではなく、主に好奇心で。
その様子に呆れつつも、俺は言葉を続けた。隠し立てしたところで、こいつにはどうせバレる。
「美濃さんって覚えてるか?中等部まで一緒だった、ほら、菊乃屋の……」
「菊乃屋……?ああ!美濃さんか!そういえばいたなぁ……懐かし……確か後妻さんと揉めて追い出されちゃったんだったっけ?」
ソファの背もたれに背中をダランと預けた駿が気の毒そうな声を漏らす。
先日萌黄の口から直接聞いた事実とは異なるが、駿の話は、当時突然姿を消した萌黄に関して学校でまことしやかに流れていた噂そのものだった。
美濃家の当主が実の娘を捨てて、若い後妻に走った――そんな胸糞悪い噂話は当時の保護者ネットワークを通じて瞬く間に広がった。
あの学校の保護者は人の親であると同時に、政財界に影響力を発揮する人物ばかりだ。
富裕層を相手に商売をする高級呉服店の菊乃屋は、この眉をひそめる噂話(……ほぼ事実だが)のせいで、かなりの経営不振に陥っていた。
俺の母親もその噂を耳に入れて以降、菊乃屋から他の呉服屋へ鞍替えしている。