腹黒御曹司の一途な求婚
トントントントン、とリズミカルな音と共に、まな板の上では細かく刻まれた青ねぎが瞬く間に量産されている。
目の前で繰り広げられる水際立った包丁さばきに、私は思わず感嘆の声を漏らした。
「すごい久高くん……本当にお料理上手なんだね……」
「ありがとう。萌黄にそう言ってもらえると頑張って練習した甲斐があるよ」
「うん、本当に上手……すごいなぁ……」
想像以上の手際の良さに語彙力が失われて、さっきからすごいという言葉しか口から出てこない。
久高くんの家に着いた後、仕上げの準備をするという彼に手伝いを申し出たところまではよかったけれど、もしかしなくても私が台所に立つ必要はなかったのでは……と思わざるを得ない。
でも久高くんの言う通り座って待っているのでは、女子の沽券に関わる。
それにエプロン姿の久高くんを間近で見たかったというのもあって。
グレーのエプロンを身につけて、シャツを腕まくりをする久高くんの姿は大変眼福だった。
思わず手を止めてうっとりと眺めまわしてしまうほど。
「俺っていい旦那になると思わない?」
「うん、本当にそうだと思う」
途端、包丁を操る久高くんの手がピタリと止まる。
不思議に思って見上げた久高くんは、目尻に朱を刷いて口を真一文字に引き結んでいた。
(あ……)
自分が無意識に何を口走ったかを思い出して、私の頬もつられて紅潮した。
久高くんは、多分冗談のつもりだったのに……。
キッチンには浮ついた沈黙が流れ、なんとも言えない搔痒感に苛まれる。
私はこのむず痒い空気を霧散させたくて、手元にあったサニーレタスを持ち上げた。
「えっ……と、これ、千切ったらいいかな?」
「あ……うん。ありがとう。えっと、そうだな、一口大でお願い」
少しぎこちない指示を受けて、まごつきながらレタスを水で洗い、一枚ずつ剥いで食べやすいであろう大きさに千切っていく。
何を話せばいいのか分からなくて、キッチンは無言のまま。
私は逸る鼓動を鎮めるので精一杯だった。
目の前で繰り広げられる水際立った包丁さばきに、私は思わず感嘆の声を漏らした。
「すごい久高くん……本当にお料理上手なんだね……」
「ありがとう。萌黄にそう言ってもらえると頑張って練習した甲斐があるよ」
「うん、本当に上手……すごいなぁ……」
想像以上の手際の良さに語彙力が失われて、さっきからすごいという言葉しか口から出てこない。
久高くんの家に着いた後、仕上げの準備をするという彼に手伝いを申し出たところまではよかったけれど、もしかしなくても私が台所に立つ必要はなかったのでは……と思わざるを得ない。
でも久高くんの言う通り座って待っているのでは、女子の沽券に関わる。
それにエプロン姿の久高くんを間近で見たかったというのもあって。
グレーのエプロンを身につけて、シャツを腕まくりをする久高くんの姿は大変眼福だった。
思わず手を止めてうっとりと眺めまわしてしまうほど。
「俺っていい旦那になると思わない?」
「うん、本当にそうだと思う」
途端、包丁を操る久高くんの手がピタリと止まる。
不思議に思って見上げた久高くんは、目尻に朱を刷いて口を真一文字に引き結んでいた。
(あ……)
自分が無意識に何を口走ったかを思い出して、私の頬もつられて紅潮した。
久高くんは、多分冗談のつもりだったのに……。
キッチンには浮ついた沈黙が流れ、なんとも言えない搔痒感に苛まれる。
私はこのむず痒い空気を霧散させたくて、手元にあったサニーレタスを持ち上げた。
「えっ……と、これ、千切ったらいいかな?」
「あ……うん。ありがとう。えっと、そうだな、一口大でお願い」
少しぎこちない指示を受けて、まごつきながらレタスを水で洗い、一枚ずつ剥いで食べやすいであろう大きさに千切っていく。
何を話せばいいのか分からなくて、キッチンは無言のまま。
私は逸る鼓動を鎮めるので精一杯だった。