腹黒御曹司の一途な求婚
 ソファに座って荒れ狂う心臓を宥めていたところへ、来客を告げるチャイムの音が聞こえてきた。
 
 立ち上がってインターホンのモニターを覗き込むと、三十代くらいの男性が映っている。
 多分この人が弁護士で、久高くんの従兄の和泉幸人さん。
 でも彼の背後の風景がエントランスではなく、明らかに玄関扉の前のもので、私は首を傾げた。

「久高くん。多分和泉さんがいらっしゃったと思うんだけど、もう玄関の前にいるみたいで」
「ああ。幸人も同じマンションだからね。あいつ意外に早いな……」
「そうなんだ。あ、じゃあ私、出てくるね?」
「ごめん、ありがとう」

 従兄弟で同じマンションって仲良しだなぁ、なんて思いつつ、私は少し緊張気味に玄関へ向かう。

 和泉さんは久高くんと同じですらっと背の高い、爽やかな雰囲気の男性だった。
 
 でも顔はあまり久高くんとは似ていない。久高くんはどちらかというとクールな印象だけれど、和泉さんは優しげな面立ちをしていた。

 事前情報によると、和泉さんは母方の従兄とのこと。だから久高くんはきっとお父様似なんだろう。

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