腹黒御曹司の一途な求婚
すると頭上から苦笑いが降ってきた。
「母さん、萌黄とはまだ付き合ってないから」
「そうだったの?じゃあ頑張らなきゃ。グズグズしてると他の方に盗られちゃうわよ?」
「はいはい」
コーヒーカップをそれぞれの前に置いた久高くんが、私の隣に腰掛ける。
座ったら?と久高くんに言われて、立ち上がったままだった私もノロノロと元の席に座った。
てっきり反対されると思ったのに……。
予想外の反応に戸惑う中で、ふと思い当たることがあった。
(もしかして、芙由子さんはご存知ないのかもしれない……)
私が、菊乃屋と、そして美濃家となんの関わりもないただの小娘に成り下がっていることを。
だとしたら、今ちゃんと言わなくちゃいけない。
「あ、あの……私、今は訳あって美濃の家とは関わりがないんです。その、父とも……だから……」
だから、久高くんには相応しくないんです――そう続けようとした言葉は喉をつかえて出なくて。
芙由子さんの反応が怖い。私はギュッと目を瞑って俯いた。
体中を流れる血液がものすごい速さで全身を巡っていくのを感じながら審判の時を待っていると、不意に膝に置いた手が温かいもので包まれた。
顔を上げれば、久高くんが私を勇気づけるように微笑んでいる。
ほわりと、戸惑う心が撫でられた気がした。
「母さん、萌黄とはまだ付き合ってないから」
「そうだったの?じゃあ頑張らなきゃ。グズグズしてると他の方に盗られちゃうわよ?」
「はいはい」
コーヒーカップをそれぞれの前に置いた久高くんが、私の隣に腰掛ける。
座ったら?と久高くんに言われて、立ち上がったままだった私もノロノロと元の席に座った。
てっきり反対されると思ったのに……。
予想外の反応に戸惑う中で、ふと思い当たることがあった。
(もしかして、芙由子さんはご存知ないのかもしれない……)
私が、菊乃屋と、そして美濃家となんの関わりもないただの小娘に成り下がっていることを。
だとしたら、今ちゃんと言わなくちゃいけない。
「あ、あの……私、今は訳あって美濃の家とは関わりがないんです。その、父とも……だから……」
だから、久高くんには相応しくないんです――そう続けようとした言葉は喉をつかえて出なくて。
芙由子さんの反応が怖い。私はギュッと目を瞑って俯いた。
体中を流れる血液がものすごい速さで全身を巡っていくのを感じながら審判の時を待っていると、不意に膝に置いた手が温かいもので包まれた。
顔を上げれば、久高くんが私を勇気づけるように微笑んでいる。
ほわりと、戸惑う心が撫でられた気がした。