【ピュアBL】心が読める推しとアイドルユニットを組むモノガタリ
 白桃大知が週刊誌に撮られた。白桃大知が出演した映画で相手役だった、清純派女優〝木野宮 華〟が住んでいるマンションの前で。

 記事が公開される3日前、「記事載せます」と事務所の方に連絡が来た。載ると知った後すぐに「迷惑かけてごめんなさい」と白桃大知は何度も謝ってきた。謝って来た時に、どうしてそこにいたのか理由を聞こうか迷ったけれど、ふたりで何をしたのか、男女関係を実際に持ったりしたのか、真実を知るのが怖くて聞けなかった。

 記事が公開されると隅から隅までチェックする。

『映画共演で愛が育ち、リアルな通い愛へと発展』
『大知くんが華ちゃんにベタ惚れらしいと、ふたりと親しい友人は話していた』

 親しい友人って誰だよ……。

 白桃大知は仕事以外の時間は家にいつもいて、リビングで俺とずっと一緒に過ごしているし。いつ親しい友人とかいうやつにそんな恋バナ打ち明けたんだよ。 

 なんて考えながらも、何回も読んでいるうちに真実だと思えてくる。

 SNSのファン達の反応はひどかった。

『ユニットデビューしてから撮られるの早すぎ最低。遥斗くんに迷惑かけないで』
『課金したらその金は彼女のもとへいくのか』
『これからツアーだとかイベントだとか増えそうだけど、ショックでいけないな』……。

 迷惑かけるなよとか嫉妬心とか、マイナスな気持ちが交わり、俺も白桃大知に冷たくしてしまった。ひどい言葉も投げてしまった。

「今が大事な時期なのに恋愛なんか楽しんで……撮られるし、本当に最悪だな。お前のせいで関わった企業とか人、沢山に迷惑かけるかもしれないんだぞ」と。

「恋愛なんかじゃ……、いや、ごめんなさい」

 何か言いたげな雰囲気も察したけど、イライラして聞く余裕もなかった。それから数日一緒にいても気まずい雰囲気で。

 夜中、白桃大知は家から出ていき、それから家に帰ってこなくなった。よりによってそのタイミングでそれぞれ別の現場での仕事が続く。

 頭が冷えてくると、白桃大知の心だけは、ずっと読めたままならば良かったのにと、ないものねだり状態になる。

 相変わらずSNSの白桃大知への中傷は続いていた。ファン以外の、ただ面白おかしく白桃大知を傷つけたいだけの人も参加してきて。だんだんそいつらのことが許せなくなってきた。

 中傷を読んでいくうちに、俺もSNSのやつらみたいに一部だけ切り取り、理由も訊かずに白桃大知を傷つけてしまったんだと反省した。

 同時に『演技や歌が好きだからこれからも応援しています』とか、『これからも遥斗と一緒に前に進んでほしいです。ふたりが好きです』だとか、ひどい反応以外の言葉が目に入ってくるようになってくる。

 正直、気まずいまま白桃大知と会えなくなって、気持ちが沈んでいる。そしてずっと、白桃大知のことばかり考えている。

でもあと三日したら一緒の撮影が。だけどその日まで我慢出来なくなり『白桃、どうしてる? 家に帰ってこいよ』と連絡してみた。

 すぐに既読になり『これ以上迷惑はかけられないので』とだけ返事が来る。

『どこにいる?』と送ると返事は来なくなった。

 白桃大知の性格上、世間に目をつけられた関係の、噂の女といるのはありえないだろう。ありえないと信じたい。マネージャーに電話してみた。

「白桃と打ち合わせしたくて、でも連絡とれないんですけど、どこにいるか分かります?」

 気まずい雰囲気なのを悟られたくて嘘をついた。

「大知くんなら新曲とかセリフとか覚えるのに集中したいからホテルに泊まってるけど、聞いてないの?」
「あ、そうでした。場所聞いたけど、どこでしたっけ?」

 マネージャーから教えてもらい場所を確認すると、タクシーでホテルに向かった。
 着くとすぐに白桃大知に電話をかけた。

「今、ホテルの前にいるんだけど、部屋の番号教えて?」
「なんでいるんですか? 僕が今外に行きます」
「いや、いい。番号教えて?」
「1201ですけど……」

 聞くとすぐに部屋に向かった。
 ドアが少し開いていて、隙間からこっちを覗きながら待っていた白桃大知。俺を見た瞬間に「遥斗くん、なんで泣いてるんですか? とりあえず入ってください」と驚きの表情をみせながら俺の手を思い切り引っ張って、ドアを閉めた。
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