カラダもココロも甘く激しく溺愛してくる絶対的支配者様〜正しい恋の忘れ方〜
「放送の声、どなたですか」

「うちのクラスの放送部」

「わざわざ人まで使って…生徒会長はやりたい放題できていいですね」

「お前こそ言いたい放題だな」

呆れたような笑みを見せる先輩に腹が立つ。

「音楽だったんです」

「何が」

「一時間目。音楽だったんです。遅れますって先生に言えてません」

「もう言ってるよ。音楽の担当、俺の担任だろ」

「…そうでしたっけ?」

「砂雪のクラスの担任は、俺のクラスでも数学教えてる。なぁ、」

「はい」

「あの日さぁ、なんでわざわざ生徒会室まで数学聞きに来たんだよ。生徒会も休みだったし誰も居なかったかもしれないのに、担任に聞いたほうが早いだろ」

「もしかして、私が先輩に会えるかもって期待してたとか思ってます?」

「なんの挑発だよ」

「先輩が本当に私を好きなんだったら、私もそう思ってたらいいなって思ってるかなぁって」

嫌な女だ。
すっごく嫌な言い方をしてることも分かってる。

腹の中のドス黒い感情を、
ドロドロした憎しみを、こうやって本郷 カナデが本当に持っているかもしれない私への感情を逆撫ですることでしか私は私の感情を抑えられなかった。

この人は私の恋を壊した。
だったら先輩の恋も壊れちゃえばいい。

私を好きだって言った言葉が本心なら、早く私を嫌いになれ。
憎めばいい。

あなたの恋も壊れてしまえばいい。

「思ってたよ」

「…は、はは…先輩って…」

「なんだよ」

「死ぬほど他人から求められ体質なのに、案外ピュアなんですね」

「今日はやけに煽るんだな」

泣いちゃいそうだった。
声が震えそうだったから、すぐには喋り出せなかった。

真っ直ぐに「好き」だって言葉にして欲しかったのは…本郷先輩じゃなかった…。

そう言葉にしてくれた人の恋が壊れてしまえって願ってる。

自分が悪魔になってしまった気がした。
< 125 / 236 >

この作品をシェア

pagetop