カラダもココロも甘く激しく溺愛してくる絶対的支配者様〜正しい恋の忘れ方〜
男子が待つ教室に行けば悠太が話してくれなかった真実もきっと聞くことになる。
それによっては本郷先輩のことをもっと憎まなきゃいけなくなるかもしれないし、
私を信じてくれた居場所を今度こそ失うかもしれない。

もう悠太との関係性が戻らないのなら、時間が忘れさせてくれるのを待つほうがラクだ。
わざわざ自分から傷をエグりに行く必要はない。

でもこの悠太の親友だって「罪」を抱えきれなくて依頼してきたんだ。
私が許してあげられることなら解放してあげないといけないのかもしれない。

でも「罪」ってなんだろう。
男子が罪悪感を抱くなんて…まるで本郷先輩は悪くないって言ってるみたいじゃん…。

自分のクラスに行くと、ドアの前に張り紙がしてあった。
こんな物、さっき教室を出る時には貼ってなかったのに。

「照明破損により取り替え中。出入禁止…?」

張り紙の下の署名は鈴城さんだ。
なるほど。効果がありそうだった。

ドアから覗いた教室の中は、もちろん照明なんて割れてない。
悠太の親友が自分の席で俯くようにして座っている。

「何してるの?」

ドアを開けて、声をかけた。
パッと顔をあげた男子はすごく不安そうな顔をしている。

「須藤…」

「何してんの?」

「…ほんとに来てくれたんだな」

「どういうこと?」

「最近さ、生徒会の副会長さん達が相談に乗ってくれてたんだよ」

「相談って?」

「最初は…向こうから話しかけてきたんだ。うちの生徒会員…須藤が大変なことになってる。このクラスで何か無かったかって」

「後輩思いの先輩達でしょ」

空気が重かった。
重くて重くて息苦しくなりそうだった。
なんとかやわらげたくて、私は笑った。
男子は笑わなかった。

「須藤…ごめん」

「なんであなたが謝るの?知ってるかもしんないけど、これは元々私と悠太の問題で、原因を作ったのは本郷先輩だったから私…」

「本郷先輩は悪くないんだ!」

「え…?」

本当は聞きたくなかった。
憎む相手が本郷先輩ならラクだったのかもしれない。

騒動の原因が悠太だったら怖かったから。
好きな人が何かしたのかもしれないって思うのが怖かった。

心のどこかで本郷先輩になら甘えてもいいっていつの間にか思っていたのかもしれない。

それを突きつけられるのが怖かった。
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