カラダもココロも甘く激しく溺愛してくる絶対的支配者様〜正しい恋の忘れ方〜
生徒会室のドアの前には予想通り、人だかりができていて、簡単には中に入れそうもない。

「ちょ…ちょっとすみませーん…」

身を屈めてペコペコと頭を下げながらなんとかドアの入口まで突き進む。

「何、あんた」

入口の一番近くに立っていた派手な女子に、生徒会室への立ち入りを阻まれてしまった。

「アレじゃない?ほら、一年の」

そばに立っていたこれまた派手な女子が私を上から下までテストするみたいに何度も見回した。

「あー、あんたが。選ばれた、たった一人の新入生様ですか」

「あの、えっと…はい。ですので中に入れていただけませんか?遅刻しちゃうのでー…」

「遅刻すればいいじゃん。そんでカナデ様を怒らせちゃえばー?」

「カナデ様?」

「は?」

「いえ、なんでも。カナデ様…そうですよねぇ!実にあの方に相応しい呼称です!」

「なんなのこいつ」

ギャルさんは気に食わなそうに私を睨みつけて、更には本郷先輩…カナデ様を一目拝もうと押しかけたファン達にぎゅうぎゅうと押されて、耐えられなくなった私はバランスを崩した。

そのままギャルさんやその周りに壁を作っていた人だかりがサッと身を引くものだから、開いていたドアから一気に生徒会室に飛び込んだ。
ついでに派手に転んだ。

私を見下ろしたまま、シーンと静まり返る生徒会室。
ドアのそばに立っていた会長・副会長代理の中村さんがそっとドアを閉めた。
最初から人だかりを散らして、閉めてくれていたら良かったのに。

でも中村さんにはもちろん罪は無い。
あるとすれば、強いて言うならばこの男。
本郷 カナデだ。
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