カラダもココロも甘く激しく溺愛してくる絶対的支配者様〜正しい恋の忘れ方〜
少し待って現れた送迎の車は、私が想像していたよりもピカピカで、更に太陽の光で黒光りしているし、なんだか車体が長い。

これぞお金持ちの車って感じがした。

カナデくんに押し込まれるようにして乗り込んで、「土足…ですか…?」って聞いた私に、運転手さんが口元を押さえて笑った。

カナデくんは「綺麗にしてくれてるから脱いでもいいけど」って言って、やっぱり笑った。

一生に何度乗れるかも分からない車に緊張しながら揺られて着いた先で、私はまたぽかんと口を開けてしまった。

「あの…送ってってくれるって…」

「送迎じゃん」

「いや、私のうちとかこの前のマンション…」

「カナデ様、降りられますか?」

「あぁ。悪い。ほら、砂雪、行くぞ」

運転手さんが開けて待っててくれていたドアから、私達は外に出た。

「父は?」

「本日は会食でございます。奥様は同窓会に参加されると伺っております。先ほど送迎して参りました」

「それじゃあ俺が呼びつけて休憩取れてないんだな。悪かった」

「何をおっしゃいますか!」

運転手さんがぶんぶんと首を振った。

カナデくんのお父様が雇い主だとして、カナデくんはそのご子息にあたるけれど、偉ぶらないところ、素敵だなって思った。

そんなことより…。

「こちらの大豪邸がカナデ様のお屋敷ですか…」

「おい、口調。影響されすぎ」

クスクス笑うカナデくん。
本当にずるいよ。

今から私を捨てるくせに…。
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