カラダもココロも甘く激しく溺愛してくる絶対的支配者様〜正しい恋の忘れ方〜
私はカップを机に置いて、ドアにそっと手を掛けた。
一番近くでさっきのギャルさんが私を睨みつけている。

「砂雪ちゃん、平気?」

中村さんが棚に詰まった書類を確認しなが整理をしている。
私をチラッと見たけれど、その視線はまたすぐに書類達と向き合った。

「大丈夫です」

ドアを開けた瞬間に、女子達が一斉に奇声を上げた。
カナデ様、カナデ様と叫び、今にも生徒会室に飛び込んできそうな勢いだった。

振り返ったら本郷先輩は彼女達とは目も合わせずに、中村さんが運んでくる書類に視線を落としている。

「あのっ!すみません!」

大声を張り上げた私に野次が飛ぶ。
よく聞き取れないけれど、調子に乗るなとか、なんでお前がとかの悪口も聞こえてくる。

「すみません!ここを離れてください!」

「なんでお前に指図されなきゃいけねーんだよ!」

ギャルさんが私に詰め寄った。

こんなに威勢がいいのに誰も中に入ってこないのは、ある意味「カナデ様」によく調教されているって思った。

「本当にお願いします」

「調子に乗るなよ」

「あの…これじゃあ本郷先輩がお外に出れないって…」

「は?カナデ様がうちらを嫌がってるって言いたいわけ?」

「ちっ…違います。先輩はいつも応援してくださる皆さんに感謝してると思います。でもこの学園の生徒会長としてお仕事しなきゃいけないから…だから、皆さんがここに集まったままだと身動きが取れないかなって…」

「だからそれをなんでお前に言われなきゃいけないの?それならカナデ様がっ…」

「砂雪」

「えっ」

ギャルさんが「信じられない」って顔をして、見上げた。

その視線を辿って振り向いたら、ドアの上のほうに手を掛けて、本郷先輩が微笑んでいた。

先輩の胸板辺りに私の頭がある。
先輩の体がすごく近くにあるから、頭上にちょっと影ができた。

本郷先輩がこんなに近くに居るのは初めてだった。

いい匂いがするって思った。
それが鈴城さんと同じ香りだって気がついた。
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