カラダもココロも甘く激しく溺愛してくる絶対的支配者様〜正しい恋の忘れ方〜
「カナデ様!?」

「砂雪なんだって」

「はい?」

「この子の名前。お前じゃなくて、砂雪なんだってさ。覚えてあげてね」

「はっ…はい!」

これが漫画やアニメなら、女子達の瞳はハートマークに描かれているに違いない。
先輩のたった一言で女子達は骨抜きになった。

「それと、俺からもお願い」

「なんですか!」

「今日は外出しなきゃなんだよね。だから道、開けてくれる?」

「もちろんです!すみませんでした!」

先輩がにっこり微笑んだのを合図に、波が引いていくように女子達がスッと立ち去っていく。

一瞬だった。
こんなに一瞬で引くのなら最初から自分で言えばいいのにって思ったけれど、助けてくれたから言わなかった。

去り際に女子達は、先輩に沢山のプレゼントを渡していった。
誕生日やイベント事でもでも無いのにこんなにプレゼントを貰う人を初めて見た。

先輩はその全てを長谷川さんに渡した。
長谷川さんは、中村さんが整理していた書類が入った大きな段ボール箱にバサっとプレゼント達を押し込んだ。

「それ、どうするんですか。書類」

「これはもう保管する必要の無い書類だから捨てるのよ」

相変わらず棚を整理しながら中村さんが言った。

「じゃあプレゼントは?」

「捨てるのよ」

鈴城さんが鈴の鳴るような声で爽やかに言った。

「捨てる?」

「キリが無いだろ。毎日毎日」

「でも先輩に喜んで欲しくて一生懸命…!」

「じゃあ砂雪が持って帰れば?」

砂雪って呼んだ…って思った。
もう「お前」って言わないんだ。
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