カラダもココロも甘く激しく溺愛してくる絶対的支配者様〜正しい恋の忘れ方〜
「逃げるなよ」

先輩に掴まれた手首がギュッと締まって痛い。
本気で私を逃さない、目的は何?

「痛い…です…」

「お前が逃げるからだろ」

「逃げません。だから離してください」

「証拠は?」

「証拠?」

「逃げないって証拠」

「そんなの…私が信用できないですか?」

「できない」

「酷い。じゃあどうすればいいんですか?先輩が私に何か言いたいならちゃんと話がしたいだけです」

「お前はいつもそうやって突っかかってくるんだな」

「私が突っかかってるんじゃないですよ。先輩が私をっ…」

「私を?なんだ?」

「私を嫌って意地悪ばっか言ってくるから…!」

言った瞬間、私の足が床から離れて体が宙に浮いた。

違う…、先輩に抱きかかえられている。
お姫様抱っこ!?

抱えられた私はそのまま会長席の机に雑に置かれた。

「痛いです!」

「うるせぇ」

「何するんですか!」

「誰が嫌ってるって言った?」

「え?」

とん、って肩を押されて机の上で仰向けになった。

本郷先輩が私の肩らへんで左腕を机についた。

右手で前髪の端を撫でられるようにされて、目尻の近くだったからギュッと目を瞑ってしまう。

「ちゃんと見ろ」

ゆっくり目を開けたら、先輩とばっちり目が合った。
反らせない。
漆黒の瞳。
長いまつ毛。
ゆっくりとしたまばたき。

触れてみたい。

コップの中に一滴の水滴をポタッと落としたような衝動は一瞬で脳と体を支配した。
その波紋はサッと広がった。

気づいたら本郷先輩の頬、口角に触れている自分が居た。
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