「めでたし めでたし」から始まる物語
16.ソニアside
ティエリー・ギレム公爵子息。
姿形は物語に登場する王子様にピッタリなのにクール。かと思えば優しいところもある――――らしい。クラスの女子達が話す声が嫌でも耳に入る。
あれから頑張ってティエリーに近づこうとしたけど無理だった。
彼の主催するパーティーは高位貴族しか立ち入り禁止で、「パーティーに行ってみたい」と言っても誰も連れて行ってくれなかった。だったら紹介して欲しかったのに、それもダメ。ダメダメばっかり。
それだけじゃない。
最近、みんな、そっけない。
『婚約者が怒るからな』
それ変じゃない?
だって怒っても次の日には私の傍にいたのに。急になんで?
『僕たちの場合、ソニアより年上だからね』
だから何?
先輩後輩の関係でしょ?今まで通りじゃない。
『卒業後の事も色々考えないといけねぇんだ』
それって家の跡を継ぐって事でしょ?
婚約者との結婚準備?なにそれ?
よく分からない事を言われたけど、要は、婚約者よりも私と一緒にいる時間が多い事を親に咎められたみたい。卒業も間近に迫っているからと、私と距離をおくようになった。
もっと詳しく聞くと、前に参加したパーティーでの一件が噂になっていたらしく、その出来事で男友達の親はカンカンらしい。
なんで?
親は関係ないでしょ?
私、何もしてないのに……。
どうして男友達が離れていこうとするのか分からなかった。
そんな時だった。
私に何時も意地悪する女子が話しかけてきたのは――――
「……は?み、見合い?私が……?」
「ええ、貴女には随分とお世話になったもの。結婚の仲介役くらいはさせていただくわ。勿論、無理にとは言わないけれどね」
そうして見せてもらった見合い候補達の絵姿。
「な、なに……これ……?」
「あら?何かご不満でも?」
「ふ、不満に決まってるでしょ!!なにこれ!!オジサンばっかりじゃない!!!」
「あら?それは仕方ありませんわ。だって貴女は商家の出身。しかも“曰く付きの訳アリ”とくればねぇ。こちらの方々は『それでも構わない』と仰ってくださった奇特な男性達ですもの。この学園に通いながらも全くのマナー知らずで常識知らずでも“正式な妻”として迎えても構わないそうですわ。『引退した後なら非常識な妻を持っても表に出す事もないから』と笑っていましたから」
「な、なによそれ?!」
「当然でしょう?どこの世界に淑女教育を終えていないどころか、最低限のマナーや貴族の常識をしらない、または理解できない女性を“正妻”にする者がいるのです。公に出さないからこそ“妻”に据える事ができるというもの。御実家の方は下位貴族か有力な商会との縁組を期待しているようですが、それは無理ですわ。だってそうでしょう?聡い商人達からすれば顧客とトラブルを抱えている女性を妻にする事はできませんし、ましてや学園内での交流もまともにできない女性は社交界で生き残っていけません。特に貴族は血を重んじる生き物です。誰の子を孕むか分からない女性を妻にはできませんでしょう?」
クスクスと笑う声。馬鹿にするような笑い方だった。
頭が真っ白に染まった。
なんで?どうして?
私と居る方が楽しいって!
私が一番可愛いって言ったじゃない!!
混乱する私は気付かなかった。その女子生徒が近づいてくるのを。私との距離を縮めると、その憎たらしい口は開いた。私の耳元で――
「……その“非常識ぶり”で長年の婚約関係を破綻に追い込んだご自覚はなくて?貴女のせいで破談になった婚約は数多ありますわ。殆どの男性が遊びだと訴えたところで、受け入れる側がそう受け取らなければそれは只の裏切りですのにね。まぁ、そこら辺の教育をろくに受けられなかったのだから仕方ありませんが。一部の者達は貴女を共有する事を目論んでいたそうですが、そんな倫理観のない男と夫にしたい妻はいませんわ。愛人を作るにしても妻の許可と両家の了承が必要だと言いますのにね。貴女とのお付き合いで常識がおかしくなったのかしら?それでも、貴女のような品性下劣な方が卒業後も同じ場所に居られても迷惑極まりありませんから、しっかりと手綱の握れるご主人様を紹介して差し上げるという寸法です」
なに言ってんの??
訳わかんないこと言わないでよ!!頭の中は混乱してて上手く話せなかった。でもこれだけは言っておかないと!!
「わ、わたしはオジサンじゃなくて格好いい人と結婚するの!!」
「結婚できるとお思いですの?」
「当たり前じゃない!私はこんなに可愛いんだから!!」
「ええ、頭の中も同じくらいに可愛らしいですものね。だから誰からも認められないでいるのですが……それを理解していないとは……哀れですわ」
見下すような瞳に憐れみを含む声音。絶対バカにしている!私の事嫌いなんだ!ムカつく!!
「まぁ、無理に勧めるつもりはありませんわ。考えが変わりましたら、私にご一報ください。良いご縁を紹介して差し上げますから」
言うだけ言って帰って行く女生徒を睨みつける。なによ、なんなのよ!!
私は絶対に素敵な人と結婚するんだから!!
そう王子様みたいな人とね!!!
姿形は物語に登場する王子様にピッタリなのにクール。かと思えば優しいところもある――――らしい。クラスの女子達が話す声が嫌でも耳に入る。
あれから頑張ってティエリーに近づこうとしたけど無理だった。
彼の主催するパーティーは高位貴族しか立ち入り禁止で、「パーティーに行ってみたい」と言っても誰も連れて行ってくれなかった。だったら紹介して欲しかったのに、それもダメ。ダメダメばっかり。
それだけじゃない。
最近、みんな、そっけない。
『婚約者が怒るからな』
それ変じゃない?
だって怒っても次の日には私の傍にいたのに。急になんで?
『僕たちの場合、ソニアより年上だからね』
だから何?
先輩後輩の関係でしょ?今まで通りじゃない。
『卒業後の事も色々考えないといけねぇんだ』
それって家の跡を継ぐって事でしょ?
婚約者との結婚準備?なにそれ?
よく分からない事を言われたけど、要は、婚約者よりも私と一緒にいる時間が多い事を親に咎められたみたい。卒業も間近に迫っているからと、私と距離をおくようになった。
もっと詳しく聞くと、前に参加したパーティーでの一件が噂になっていたらしく、その出来事で男友達の親はカンカンらしい。
なんで?
親は関係ないでしょ?
私、何もしてないのに……。
どうして男友達が離れていこうとするのか分からなかった。
そんな時だった。
私に何時も意地悪する女子が話しかけてきたのは――――
「……は?み、見合い?私が……?」
「ええ、貴女には随分とお世話になったもの。結婚の仲介役くらいはさせていただくわ。勿論、無理にとは言わないけれどね」
そうして見せてもらった見合い候補達の絵姿。
「な、なに……これ……?」
「あら?何かご不満でも?」
「ふ、不満に決まってるでしょ!!なにこれ!!オジサンばっかりじゃない!!!」
「あら?それは仕方ありませんわ。だって貴女は商家の出身。しかも“曰く付きの訳アリ”とくればねぇ。こちらの方々は『それでも構わない』と仰ってくださった奇特な男性達ですもの。この学園に通いながらも全くのマナー知らずで常識知らずでも“正式な妻”として迎えても構わないそうですわ。『引退した後なら非常識な妻を持っても表に出す事もないから』と笑っていましたから」
「な、なによそれ?!」
「当然でしょう?どこの世界に淑女教育を終えていないどころか、最低限のマナーや貴族の常識をしらない、または理解できない女性を“正妻”にする者がいるのです。公に出さないからこそ“妻”に据える事ができるというもの。御実家の方は下位貴族か有力な商会との縁組を期待しているようですが、それは無理ですわ。だってそうでしょう?聡い商人達からすれば顧客とトラブルを抱えている女性を妻にする事はできませんし、ましてや学園内での交流もまともにできない女性は社交界で生き残っていけません。特に貴族は血を重んじる生き物です。誰の子を孕むか分からない女性を妻にはできませんでしょう?」
クスクスと笑う声。馬鹿にするような笑い方だった。
頭が真っ白に染まった。
なんで?どうして?
私と居る方が楽しいって!
私が一番可愛いって言ったじゃない!!
混乱する私は気付かなかった。その女子生徒が近づいてくるのを。私との距離を縮めると、その憎たらしい口は開いた。私の耳元で――
「……その“非常識ぶり”で長年の婚約関係を破綻に追い込んだご自覚はなくて?貴女のせいで破談になった婚約は数多ありますわ。殆どの男性が遊びだと訴えたところで、受け入れる側がそう受け取らなければそれは只の裏切りですのにね。まぁ、そこら辺の教育をろくに受けられなかったのだから仕方ありませんが。一部の者達は貴女を共有する事を目論んでいたそうですが、そんな倫理観のない男と夫にしたい妻はいませんわ。愛人を作るにしても妻の許可と両家の了承が必要だと言いますのにね。貴女とのお付き合いで常識がおかしくなったのかしら?それでも、貴女のような品性下劣な方が卒業後も同じ場所に居られても迷惑極まりありませんから、しっかりと手綱の握れるご主人様を紹介して差し上げるという寸法です」
なに言ってんの??
訳わかんないこと言わないでよ!!頭の中は混乱してて上手く話せなかった。でもこれだけは言っておかないと!!
「わ、わたしはオジサンじゃなくて格好いい人と結婚するの!!」
「結婚できるとお思いですの?」
「当たり前じゃない!私はこんなに可愛いんだから!!」
「ええ、頭の中も同じくらいに可愛らしいですものね。だから誰からも認められないでいるのですが……それを理解していないとは……哀れですわ」
見下すような瞳に憐れみを含む声音。絶対バカにしている!私の事嫌いなんだ!ムカつく!!
「まぁ、無理に勧めるつもりはありませんわ。考えが変わりましたら、私にご一報ください。良いご縁を紹介して差し上げますから」
言うだけ言って帰って行く女生徒を睨みつける。なによ、なんなのよ!!
私は絶対に素敵な人と結婚するんだから!!
そう王子様みたいな人とね!!!