俺様御曹司は逃がさない
お母さんに手を振り外へ出ると……もちろん家の前には高級車が停っている。ウィーンッと後部座席の窓が開いて、“さっさと乗れ”と言わんばかりの顔をしている九条。

あたしは車に乗り込み、運転手さんに挨拶をして窓の外を眺めていた。


「ねぇ、九条。聞きたいことあるんだけど」

「あ?なに?」


眠いのか、あくびをしながらチラッとあたしを見てきた九条。あたしは九条の目をジーッと見つめた。


「……な、なんだよ」

「この制服、気持ち悪いくらいあたしにフィットするんだけど……なんで?」

「あ?ああ、そりゃお前用に作ったからに決まってんじゃん」

「あたし制服の採寸なんてした覚えないんですけど?」

「だろうね。してないもん」


・・・・だったらなんでこんなにもフィットするんでしょうか?


「だったらなんでっ……」

「はあ?んなもん見りゃ分かんでしょ~」

「……はい?」

「だぁから、女のスリーサイズなんて見りゃ分かんでしょ」


・・・・こいつ、本っ当に最っ低!!


「はは。クズっぽい特技をお持ちなんですねー」

「お前とは違って経験が段違いだからね~。あ、ちなみに俺はもうちょい胸がある方がタイプ~」


ヘラヘラ笑っている九条を殴ってやろうと心に決め、握り拳に力を入れた瞬間──。


「七瀬様。柊弥様に危害を加えるようなことはなきよう、くれぐれもお気をつけください」

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