俺様御曹司は逃がさない
ルームミラー越しに運転手さんと目が合った。

“お願いだから坊っちゃんの機嫌を損ねるようなことはしないでくれ”と言わんばかりの顔をして、あたしに訴えてくる。


「……スミマセン」


ニコッと微笑み、運転に集中する運転手さん。


「え?なに?俺、なんか気に障るようなこと言った?言ってないよね~?」

「……あはは、言ってませんねー」

「だよね~」


気に障るようなこと""しか""言ってこないけどね、あなたは。

はぁーあ、朝から本当に疲れるわ。


「なにお前、緊張でもしてんの?」

「いや、別に」


それから九条のお喋りに、適当に相づちを打って車に揺られていた。

今のところ緊張はしてないかな?

だって、天馬学園がどんな所か知らないし分からないし、まあ……いくらお金持ち学校とはいえ、そんなべらぼうに規格外というわけでは……ない……は……ず……。


「到着しました」

「……えっと、何処?ここ」

「あ?なぁに言ってんだよ。天馬学園に決まってんだろ?」

「て……んま……がくえん……」


ここが……“天下の天馬学園”。


なんて伝えればこの凄さが伝わるのか分かんないけど、普通にひとつの“町”がある……的な?

とにかく広くて、建物もたくさんあるし、道路もあって車の行き来もある。お金持ち・天才ってこの世の中にこんなにも居るの?ってくらい人も多いし、リアルに“街”っぽい。もう開いた口が塞がんないわ。

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