俺様御曹司は逃がさない
それ""だけ""なのに、お嬢様方はキャッキャして嬉しそうにしていた。

そして、そのお嬢様方はあたしを見るなり鋭い眼光で睨み付けてきて、その瞳の奥が物凄く冷たいものだった。

あーー、こういうパターンね。

・・・・だるぅぅ……と思ったけど、お嬢様方があたしの首元を見て、少しだけ雰囲気が変わった。

九条はそそくさ先へ行っちゃうおうとするから、一応お嬢様方にペコッと頭を下げた。

去り際に『サーバントの分際で調子に乗らないことね』と九条に聞こえないように囁き、去っていくお嬢様軍団。せっかく綺麗で可愛い顔してるのに、なーんか勿体ないな。ひとつひとつの動作は華麗な感じなのに。


「ちんたら歩くな」

「自分の歩幅考えたことある?」

「……プッ。脚短いってのは苦労すんね~」

「別に苦労したこともなければ、そもそも短くはないんですけど」

「見栄張んなよ~。見苦しいし、虚しいだけじゃん」


“事実を述べたまでだけど何か?”みたいな顔をして、悪びれる様子もない。ほんっと、デリカシーの欠片もない奴。

そんなデリカシー皆無男についてって、周りからはジロジロとコソコソと見られて視線が痛いのなんのって。

そして、連れて来られたのは──。

『な、なんじゃこりやぁぁーー!!』と心中でめちゃくちゃ叫んだ。



「ここ、俺らが自由に使ってる溜まり場」


た、溜まり場……ですか。こんなハイレベルなお部屋が溜まり場って、どんな世界線なんだろうか。

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