俺様御曹司は逃がさない
「重々承知しております」

「そ?なら問題ないっしょ」

「では、私は戻りますので。失礼いたします」


しっかり頭を下げて、眼鏡をカチッと上に上げて去っていく眼鏡先輩。


「……七瀬、もしかして泣いてる~?」


嬉しそうに、楽しそうにあたしの顔を覗き込んできた九条。


「は?1ミリも泣いてないですけど」

「ちぇ~。つまんねえの~。で?ペナルティは?」

「校舎内すべてのトイレ清掃」

「くくっ。ウケるね~。ま、せいぜい頑張れよ」


・・・・まあ、そうなりますよねーー。


「……ていうかさ!!ペナルティがあるなんて聞いてないんですけど!?」

「あ?だから言ったじゃん。その呼び方で後悔すんなよ~って」


記憶を遡ってみた……確かに、確かに言われたわ。


「だっ、だったらそうやって言ってくれればじゃん!!」

「ハハッ。なぁんか面白いな~って思って」

「信じらんないっ!!」


あたしはプンスカ怒りながら、九条を放置して歩き始めた。


「まぁまぁそんなに怒んなって~。トイレ掃除してるところ、特別に俺が見ててやるからさぁ」

「なにそれ、鬱陶しいだけじゃん。やめて」

「お前が怒れば怒るほど可笑しくて笑けてくるわ~」


スラックスのポケットに手を突っ込んで、あたしの隣を笑いながら歩く九条。

・・・・ぶっちゃけ殺意が沸いてくるわ。


「あの、隣を歩くのはやめてくれます?」

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