俺様御曹司は逃がさない
「……七瀬さんにとって朗報かどうかは分かりませんが、今年から“サーバント体力テスト”を強化する……との噂があります」


“サーバント体力テスト”……?


「今までサーバントに強く求められていたのは“教養”です。柔軟な対応力、細やかな気配り、状況に応じて適切な判断・行動を行う、マナー・エチケットはプロ並みに……等々っ……」

「さようならまっしぐらです」

「話は最後まで聞きましょうね」

「あ、はい……」

「ですが、近年物騒な事件が多発しています。マスターを襲撃……なんてこともしばしば。いざという時に俊敏に動けないサーバントは不要とのこと。今年からはその試験(テスト)が強化されるみたいです」

「ほ、ほお……」

「可能性の話にはなってしまいますが、その試験で好成績ならば……学力の方は""多少""目を瞑ってもらえる""かも""しれませんね」


・・・・なるほど。あたしが輝けるチャンスはそこしかないってことか。

ぶっちゃけ体力と根性だけは自信がある。そして、自分で言うのも何だけど、運動神経は良い方だと自負しております。とりあえずその試験とやらまでに、頑張って鍛えとこうかな。


「前田先輩」

「なんでしょう」 

「その試験っていつ頃ですか?」

「明日です」

「明日ですか、了解です…………って、え?え?え!?明日ぁぁぁぁ!?」

「七瀬さん、うるさいです」


廊下で絶叫するあたしに冷めた目を向ける前田先輩。


「あしっ、あし、あ、あしあしっ、明日……」


皆さん、悲報です。いや、朗報……なのかな?

どうやらあたしのサーバント生活、天馬学園生活は明日で終わりを迎えそうです──。

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