俺様御曹司は逃がさない
・・・・だが、直感で思った。

根拠も確証も何もないが、バカ孫にはこの小娘しかおらん。これは逃すわけにはいかんな……とな。


「────てなわけで、逃げられたわ」

「……邦一様、それは逃げられて当然ですよ……。むしろ賢明な判断ができる方だったみたいでホッとしております」


ワシの御付きをしている日下部(くさかべ)が、ルームミラー越しに呆れた表情を浮かべ、ワシをチラチラ見ながら車の運転しておる。そんな顔でワシを見るな。


「日下部、言わんでも分かっておるな?」

「……はぁぁ、相変わらず邦一様は無茶振りがすぎますね。承知いたしました、善処いたします」


大きなため息をつきながら、やれやれと言わんばかりの顔をして、ガクッと肩を落とす日下部。ただでさえ忙しいのに、余計な仕事を増やすなクソジジイ……といったところか。まぁ、日下部のことだ。


──── 1週間もあれば、あの小娘を見つけ出すだろう。

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