俺様御曹司は逃がさない
「ちょっ、九条っ!!」 

「ああ、ごめんごめん。そういうつもりは無かったんだけど、嫌味に聞こえてしまったのなら謝るよ」

「チッ。もう舞に用はねぇだろ?さっさとその高級車で帰ったらどうかな?九条君」

「…………そうだね、お暇するよ。またね、七瀬さん」


満面の笑みを浮かべて、手を振りながら去っていった九条を見て、あたしは絶望した。

・・・・はぁぁ。何をさせられることやら……。


「舞、お前マジでなにやってんの?」


拓人は拓人で激オコだし──。


「だから……大体はさっき説明した通りだって」

「そんなわけないじゃん。あの男に脅されてんの?騙されてない?」

「いやいやいや、そんなことないって。無償で天馬に通わせてもらえるなんて、そんなありがたい話ないじゃん?将来のこと……就職のことを考えると、これ以上に有利な所って無くない?偶然助けた人がお金持ちで天馬の生徒だったってだけ」

「それにしたって、おかしいでしょ」

「あたし達みたいな庶民と感覚が違うのよ、ああいう人達はさ」

「……マジで大丈夫?舞」

「うん。マジで大丈夫だよ」

「そっか」


──── それから拓人はウチでご飯を食べて、最後はいつも通りの笑顔で帰って行った。


「はぁぁ……疲れたぁぁ」


なんでも話してきた幼馴染みだけど、さすがに言えないよね……サーバントのことは。そして、さっきからスマホが鳴りまくってるけど、嫌すぎて放置している。


「お風呂入ろ……」


──── こうしてあたしの天馬学園初日はドタバタで終わった。

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